メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2004年6月9日掲載>

カカンジュの町に幼稚園を!
<ボスニア・ヘルツェゴビナ>


クラスメートと遊ぶ女の子 教室の中は、ごくありふれたモダンなようすです。壁には絵がはってあって、二人の少女がアップテンポの音楽に合わせて踊る中、小さなテーブルに集まっている子どもたちは目を輝かせています。

 ここはボスニア・ヘルツェゴビナ、カカンジュの町にあるムラ・ムスタファ・バセスキジャ小学校の中の幼稚園。この幼稚園がふつうと異なるのは、この幼稚園自体がそこにあることです。この幼稚園は、ユニセフが行う、ボスニアの膨大な数の子どもたち、特にロマ人の子どもたちが来られる幼稚園を作るキャンペーンの一環なのです。 6ヶ月前にこのプロジェクトが始まって以来、9人のロマ人の子どもたちを含む20人の男の子と女の子が、リラックスした環境の中でいきいきと午前中のひと時を過ごしています。彼らの先生であるメルヴィーダ・ネイマリジャによると、ここで学んでいるのは子どもたちだけではないと言います。「私たち教師もまた、学んでいるのです」「私たちがはじめる前はこの地域に幼稚園はありませんでした。ここが最初の取り組みですが、この成功によって、後にも同じような幼稚園ができるでしょう」

チャイルドフレンドリー・スクールでは小グループでの活動が取り入れられています ユニセフは、少数民族や帰還難民の子どもたちのような、最も弱い立場に置かれた人々を支援してきました。その経験は、彼らを学校教育の中に取り組むことが、差別と戦うかぎになることを示しています。

 ミルサッド・セジュディックはロマ家族の中に幼稚園の重要性を説いてまわるロマ人コミュニティのリーダーです。「ロマの子どもたちが学校を好きになるということはすばらしいことです。ですが、まずはじめに、学校に通わないことで子どもたちが失うものの大きさを、子どもたちの両親に知ってもらわなければなりません。同時に学校側は、子どもたちのために適切な環境を整える必要があります。もしロマ人の子どもが自分が差別されていると感じたら、家にいたほうがいいと思うでしょう」

 ボスニア・ヘルツゴビアのロマ人コミュニティの失業率は100パーセントに上り、多くの家庭が経済的にとても苦しい状況に置かれています。子どもたちが仕事や物乞いを強制され、家計を支えることが普通になっています。もし子どもを学校に行かせられるとしたら、男の子たちのほうが女の子たちよりも優先されます。

教室の壁に貼る絵を描くアイーダ(6歳) アイーダは6歳のロマ人の女の子ですが、数少ない幸運な女の子のひとり。カカンジュに幼稚園ができたときから通っています。「友だちと遊べるし、たくさんの色鉛筆があるのよ」と、彼女はカラフルな星を描いた絵を誇らしげに見せてくれました。

 ロマの子どもたちを幼稚園に行かせる運動は、学校教育に入る前に彼らの学習や社会的スキルを高めることを目的としてます。このチャイルドフレンドリー・スクールプロジェクトにおいて、ユニセフは重大な役割を担っています。少数民族が教育を受けられているかどうかをモニタリングできるよう国際社会を支援するとともに、教育分野での合意を実行に移すことができるよう政府をサポートしています。

異なるコミュニティの子どもたちが集うことによって、相互理解が深まり、偏見をなくすことにもつながります この幼稚園プロジェクトはロマの大きなコミュニティがあるボスニアの5つの地域で行われています。より多くのロマ人の子どもたちを第1学年に進学させるとともに、ロマの文化と伝統の理解促進、また、子どもを中心に置いた教育ができるよう、先生たちの能力の向上を目的としてます。このプログラムはまた、ロマの子どもたちを学校教育にとり込むための研究の基礎をなすものです。

 カカンジュには教育を受けていない子どもたちがもっとたくさんいます。「学校に来ていないロマの子どもたちがまだたくさんいます」とネイマリジャさんは言います。「親たちはお金のことを心配しているんです。私たちは学費が一切かからないことを説明して、彼らを安心させてあげなければならないのです」ですが、方向性は間違っていません。「この地域には3つの小学校があります。5年前は9人のロマの生徒しか学校に来ていませんでしたが、今は133人が来ています」とミルサッド・セジュディックさんは言います。

幼稚園に通うロマ人の女の子。両親の意識改革が初等教育の普及の鍵となります ロマ人の子どもたちが学校にくるかどうかは、多くの場合両親の考えに左右されます。学校の重要性を親に認識してもらうことは、子どもたちの教育と同じくらい大切なことです。両親はまず最初に幼稚園プログラムの事を知り、その価値を教えられ、教室を訪れるよう促されるのです。「私たちは両親に、子どもたちを学校に通わせてあげてくださいといいます」とセジュディックさんは言います。「ここでは子どもたちや若い人たちにほとんど機会がありません。学校にいかなければトラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。ですが、学校に通うことは人生について学ぶチャンスなのです。異なった文化に触れることは、教育の面からみて望ましいことだと私は思います」


2004年4月30日
ユニセフ・サラエボ事務所

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る