メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む

世界の子どもたち

<2004年3月3日掲載>

ペドロ、16歳。子どもたちの世話をして学んだことを語る
<ペルー>

 

 ペドロ・デルフィン 16歳は、人口の密集するヴィリャ・マリア・デル・トリウンフォ区にあるホアン・ワレー・サンドヴァル高校の5年生です。ここはリマ市内、円錐形に広がる南部の貧困地区です。この地区の世帯の大多数は職がなく、収入は闇市などでの取引で得ています。多くの人が、この地区に立てられた食堂で安い昼食をとっています。

 毎週末、ペドロは、スポーツのほか、授業についていけない1、2年生の勉強の手助けに時間をさいています。でも、彼を悩ますのは、自分たち若者や彼らが他の人のためにできることを、おとなたちが信用したり、頼りにしたりしようとしないということです。

 ペドロは「2×1イニシアチブ」を通じて、コンピュータの使い方を習い、学校には、インターネットを通じて友だちを作ったり、興味ある人たちと連絡を取ることができるコンピュータ室が設置されました。ペドロの家にはコンピュータがないので、ペドロと友だちは家の近くの角にあるインターネット・ブースへも行きます。ペドロは学級委員長を務めていて、ブラスバンドと聖歌隊に所属しています。

 「4年前のある日、”2×1イニシアチブ”について詳しく知りたくて、ロサ先生とグロリア先生と話をしたんだ。面白そうだったので、そのプログラムに加わった。それで、ぼくは土曜日に子どもたちの勉強の面倒を見ることになったんだ。ぼくのグループにいる子どもたちのことが、とても好きだよ。もしプログラムがこれからも続くなら、ぼくもずっと一緒にやりたいと思うよ」

 「始めのころは、一日キャンプみたいなものだと思っていたよ。だけど、子どもたちの手助けをすることで、みんなが一緒になった気持ちがしてとても驚いた。子どもたちと一緒にいることで責任感を持つようになるんだよ。子どもたちを教えることや、一緒に遊ぶことは、根気や忍耐力が必要なんだ」

 「これは、ぼくにとってもよいことだった。ぼくは自発的になったし、自分の気持ちを表したり、ぼく自身の問題をもっとよく理解することができるようになった。誰かが意地悪するんじゃないかとか、バカにされるんじゃないかなんて心配しないで、自信を持って、話をすることができるよ。それに、ぼくぐらいの年齢の子が興味を持つことについて情報ももらえる。その情報は、ぼくの心や体の健康に役立つし、若者の間ではやりつつあるエイズのような性感染症や、10代での妊娠、麻薬中毒、アルコール依存症のような危険にどう対処したらいいかも教えてくれるんだ」

 「最後の集まりのとき、何人かの子どもがぼくを“ペドロ先生”って呼んだんだよ。そんな風に呼ばれたら、自分はとても重要な立場にいるって感じるし、自尊心を持てるだろ。悪い気はしないよね。子どもたちがそう呼んでくれることで、責任感がもっと強くなるんだよ。子どもたちと一緒に活動を続けようっていう気持ちになるんだ」

 「ぼくは、子どもが父親を持つということがどれだけ大切なことか学んだよ。ぼくに子どもができたら、その子がどれだけぼくを必要とするか、分かるよ。ぼくは子どもとできるだけ多くの時間を一緒に過ごし、世界中のすべての愛情を与えるつもりだよ。だけど、ここに問題があるんだ。多くの人が、愛はギャングの問題を解決したり、ごみをきれいにするって言うけれど、ぼくに言わせれば、問題の本質は、家族にあって、十分な愛情を受けられないことにあると思うんだ。それが問題の始まりさ。なぜ人はごみを拾わないのか。なぜ子どもがギャングに加わってしまうのか。愛や愛情がなかったら、物事は悪くなるんだよ」

 問題は、鎖のようなものです。両親が間違いをおかし、家庭で問題を起こす。子どもと会話をせず、正しく子どもに接しない。愛情やコミュニケーション、適切な導きがなければ、子どもたちもまた、間違いをおかし、早く親になってしまったりします。彼らは、若く、自らを理解する時間さえなかったために、カップルで問題を抱えはじめます。そして、間違いを繰り返し、さらに多くの子どもを抱え、彼らの両親がそうであったように、同じ間違いを繰り返していくのです。この鎖は断ち切らなければなりません。

「2×1イニシアチブ(4年間のプログラム)」は、高校生が課外時間を使って、コミュニケーションや、読み書き、社交性に問題を抱える1,2年生の手助けを進んで行うプログラムです。教育省は、この「2×1イニシアチブ」をユニセフの専門的な支援を受けながら、地域の教育委員会やUEG(教育運営部)を通じて実施しています。若者のボランティアは、8週間の期間中、毎週1回子どもたちと会い、コミュニケーションや社交、文章で自分を表現する活動の手助けをします。これは、遊びやグループワークの中で行われます。主に教員養成機関の学生がこの若者ボランティアをトレーニングし、子どもとの活動について指導します。「2×1イニシアチブ」に参加する若者たちにはインターネットを使うことがすすめられ、それを通じて彼らは世界中の“ボランティア”達と交流し、活動に役立つ情報や“お話”を集めています。
 活動は2001〜2003年の間にリマ市内の4つの地区で行われ、84の教育施設で、青年ボランティアと子どもたちの養成と、活動のモニタリングが行われました。1万7,116人の小学生と5,604人の高校生ボランティアが参加しました。ボランティアは、13の教員養成機関の教育実習生からトレーニングを受けました。


トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る