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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2004年1月28日掲載>

平和と愛情と理解という注射
<ベネズエラ>


  ベネズエラの社会を長い間引き裂いてきた社会・政治的な緊張を緩和するための画期的なキャンペーンが、昨年初めに開始されて以来、全国的にすばらしい成果をもたらしています。

 「平和的共存へ愛情の投与を」キャンペーンは、異なった考えを持つ人々に対してどのような態度や行動を取ったらよいのかについて、すでに10万人以上の意識を向上させました。「投与」という背景には、すでに人びとに馴染みの深い予防接種のアイディアがありました。これは、ゼリービーンズやチョコレート、ハチミツを「ワクチン」に見たて、子どもからおとなまで、すべてを対象とした、象徴的な“予防接種”です。キャンペーンの参加者たちは、対立を解決する方法として、不寛容と暴力に対しての“予防接種”を受けるのです。

 キャンペーンはコミュニティや学校、メディアを巻き込んで、重要な問題を提起し、建設的な議論を呼び起こしています。そして、ちょうど予防接種がそうであるように、注射の瞬間はチクッとしますが、見返りはその不快感に勝るものなのです。

子どもには平和への権利がある

 「子どもの権利条約」は、すべての子どもが平和に、そして、暴力、差別と搾取に対してあらゆる保護を受けて成長する権利を持っていると述べています。ベネズエラや、その他の分極化し不安定な社会では、子どもや若者が、おとなの社会の対立によって最初にそして最悪の影響を受けるのです。

 「愛情の投与」は、ユニセフと、子どもと青少年の権利に貢献しているセントロ・コミュニタリオ・デ・アプレンディサヘ(CECODAP)というNGOと共同でつくられました。最初の「投与」は、昨年5月の全国子どもの権利週間の際に、公共の場、学校、コミュニティセンターで、ボランティアによって実施されました。当初の予想を上回る1万8,500人がこの“ワクチン”を受けました。2回めの“投与”は7月12日の子どもの日に合わせて、7月〜8月に行われ、1万9000人の人が接種を受けに来たと推定されました。

 3回目は、昨年11月、「子どもの権利条約」採択14周年の記念日に行われました。推定400以上の団体が動員され、平和という“薬”がたった1日で7万人以上に“投与”されました。このキャンペーンが進むにつれ、参加者の数もどんどん増えています。

お菓子のもてなしと大切な約束

 暴力を完全に予防し、平和的共存の担い手となるためには、3種類の“予防接種”(寛容、尊敬、平和)が必要です。“予防接種”の初日、参加者は個別のカードを受け取り、キャンディー1個かハチミツ1滴をもらいます。そして、参加者たちは、次のことをカードに書くように言われます
 「あらゆる暴力を拒むことを誓い、寛容、尊敬そして平和を家庭内、学校、職場で促進します」

 初めの“予防接種”のときに渡されたカードは、学校、公民館や病院などでその後2回にわたって繰り返される“予防接種”の時に提示され、参加者たちは、それぞれの社会的態度について簡単な質問を受けます。そして、否定的な態度を克服する方法を探り、他人とかかわる新しく楽しい方法を作り上げるように勧められます。3回の“予防接種”を受けた人は「優良治療証明書」を受け取ります。

 このキャンペーンの主な参加者は子どもと、カードを配ったり参加者に質問をしたりする側として参加する青少年たちです。しかし、すべての年齢、社会階層、民族集団で、参加者が増えています。

 今年、「私たちは市民」という草の根プロジェクトに参加しているバルガス州の公立学校が来学年度から「愛情の投与」を学校の活動に組み込むことを決めました。目的は、生徒の間に平和構築のための協調を築くことです。学校はさらに「団結」という新しい「投与」も計画しています。

 ベネズエラの首都、カラカスのサン・ホセ・デ・アンティマノ保健センターでは、通常の活動にこのキャンペーンを取り入れ、保健センターを訪れたすべての人に治療とあわせて「愛情の投与」を提供することにしました。

キャンペーンを賞賛するベネズエラ市民の声

 一般市民はこのキャンペーンを好意的に受け止めています。「平和に生きるのは難しいけれど、私たちが何かをしなければ」とベネズエラ広場の地下鉄の駅の外にいた17歳の女の子が言いました。同じ駅を通りかかった60歳の女性も「神の祝福がありますように。まだ誠実さが残っています。ありがとう」と言いました。小さな子どもでさえ平和の重要性を理解しています。地下鉄のチャカイト駅にいた7歳の女の子は、「私は、友達がお互いに優しくするように注意していなければならないし、私たちも他の人を賢い人として受け止めなければいけないと思うの」と話しました。

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