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財団法人日本ユニセフ協会

国際協力人材養成プログラム

海外インターン体験記

インターンで達成したこと、思いがけず得られたもの

氏名:佐伯 摩耶
派遣先:ユニセフ・ネパール事務所(Child Protection Section・Education Section)
派遣期間:2010年7月〜10月

バクタプール郡 国際機関等の支援が入っていない公立学校訪問(高校生の女の子たち)
バクタプール郡 国際機関等の支援が入っていない公立学校訪問(高校生の女の子たち)

7月26日から11月19日までの17週間にわたり、ユニセフ・ネパール事務所の教育セクションと子ども保護セクションの2つのセクションに所属しインターンとして働きました。派遣前の協議では会議運営などの業務補助を行う予定でしたが、派遣後に仕事内容が大幅に変わり、教育を受けられない思春期の女の子(adolescent girls)に関する調査・分析・政策提言が実際の任務で、帰国までにそれらをまとめた英文30枚程度の論文を提出することが達成課題とされました。論文の主題の設定や、調査方法、調査対象者、分析方法なども含め、論文作成のために4ヶ月間をどうデザインするかは一任されていたため、私自身が最も興味のあることを中心にインターンを形作っていきました。

職場では「研究者」として独立して仕事に取り組み、調査のためには内部資料へのアクセス、ユニセフ公用車の使用や出張も許されました。事務所の副代表からは勤務最終日まで新しいJPOだと思われていたことからも、通常のインターン以上の機会を与えて頂いたのかもしれません。国連インターナショナルスタッフは「即戦力」としていかに組織に貢献できるかが問われる厳しい環境を体感できたことは、今後キャリアを築く上で最も参考になりました。また、分からないことは周囲に聞くことが大事であるように、聞いたら答えてくれる人を見極める能力も必要だと感じます。以下で研究の経緯と詳細を説明します。

ネパールは北を中国チベット自治区、南はインドに接する内陸国で、多民族・多言語・多宗教国家であると同時にカースト制度が今でも色濃く残り、様々に折り重なった差別と極度の貧困が問題となっています。さらに女の子と女性に対してはジェンダーに基づく差別も加わり、一般的に教育機会は男性よりも限られ、経済的にも社会的にも脆弱な存在です。特に女の子から女性への過渡期にある思春期(10代)の女の子は、子どもでありながら性的・経済的に活発になるため、早婚、暴力や搾取の被害者となりやすい最も脆弱な存在と言えます。彼女たちができるだけ長く就学していることは、多くの危険からの保護にもなります。しかしユニセフは教育分野では主に就学前教育・初等教育や災害・紛争下での教育支援に重点を置いてきたことから、思春期の女の子への支援はあまり実施してこなかったという経緯があります。そこで、初等教育を受けられなかった非就学(out-of-school)の思春期の女の子を対象に、ユニセフはノンフォーマル教育(NFE)を用いてどのような教育支援を行えるかについて、この分野で既に働いている他の国際機関・国際/国内NGOから学ぼうというのが、研究のコンセプトです。

カトマンズ市内 ノンフォーマル教育クラス訪問(貧困により学校に通えない日雇い労働者の子ども)
カトマンズ市内 ノンフォーマル教育クラス訪問(貧困により学校に通えない日雇い労働者の子ども)

まずどこで誰が何をしているのかを特定するために、質問票によるマッピング調査を実施し11の機関による約100件のプロジェクトを特定、その後先方の事務所に出向いて「現場の知」を知るためのインタビュー調査を行いました。ユニセフが実施しているノンフォーマル教育プログラム(UOSP:Urban Out-of-School Programme)訪問のためにインド国境沿いテライ地域への出張を2回、他機関に紹介を受けてカトマンズ近郊の学校/ノンフォーマル教育教室訪問も2回実施しました。また、それらと並行して思春期女子に関わるデータ・資料の集約も行いました。そして思春期女子のニーズに基づいたNFE支援モデルを提言しました。この論文は思春期の女の子への支援に乗り出したユニセフ・ネパール事務所の2011-12年2カ年計画策定の参考資料となり、私が提言した「ノンフォーマル教育を通じた児童労働への取り組み」の必要性が認識されて、思春期の女の子を支援する上での優先事項に実際に盛り込まれました。あまり前例のない2つのセクションにまたがった私のインターンを通じて、子どもの保護セクションと教育セクションの協働が開始されることになったのです。また、ユニセフが主導機関を務めるUNGEI(United Nations Girls Education Initiative)へもユニセフのインプットとして提出され、同じく思春期の女の子に取り組むことになったUNGEIネパールチームのディスカッションの基礎となりました。

ユニセフ・ネパール事務所子ども保護セクションのスーパーバイザーと
ユニセフ・ネパール事務所子ども保護セクションのスーパーバイザーと

調査の過程で、ユニセフへのインターンでありながら、他機関の専門家からも指導・アドバイスを頂けたことが大変嬉しくありがたかった事を記憶しています。その上、私の修士論文にも協力したいという専門家も複数いらして、非公開の資料・データを頂いたり、帰国後の論文執筆中もメールで相談や質問などのやりとりをしました。今後は東京で博士課程に進みますが、ユニセフや他の機関から「修士が終わったらネパールに戻っておいで。一緒に働こう」と言ってもらえることは素直にうれしいです。こうして帰国後もネパールで活動する様々な機関の方とつながっていることは、かけがえのない財産になったと感じます。余談ですが、ユニセフはカトマンズのUNハウスで他の国連機関とオフィスを共有しており、世界中から集まったインターン・UNV・JPOの若手インターナショナルスタッフで集まって一緒にランチを楽しんだり演劇を見に行ったり、ネパール人スタッフのご家族が伝統料理をもてなしてくれたり、日本からきた「娘」として家族のみで行う宗教的儀式にも特別に参加させてくれたのは、日々の中でネパールに来て良かったと思う瞬間でした。

これから応募される方へ。私は日本の教育で育ち、海外留学経験がありません。しかし日本ユニセフ協会は語学力だけではないその他の能力も見て私にユニセフ現地事務所でのチャンスをくださいました。あくまで語学はコミュニケーションの道具です。ネパール事務所で苦手意識が何の役にも立たないと痛感してからは、いかに日々道具を磨くかに専念しました。何とかなります。

最後になりましたが、日本ユニセフ協会に募金をしている支援者の皆さま、日本ユニセフ協会、ユニセフ東京事務所そしてユニセフ・ネパール事務所にこの場を借りて御礼申し上げます。

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ユニセフのジェンダー主流化への取り組み:グルジアオフィスにて

氏名:佐々木 しのぶ
派遣先:ユニセフ・グルジア事務所(Child Protection Section)
派遣期間:2010年7月〜10月

ユニセフのカントリーオフィスの現場ではどのような活動をしているのか、また中でもジェンダー主流化に関してどのような取組みがなされているのか、ということに興味があり、日本ユニセフ協会の海外インターンに応募しました。ちょうど、ジェンダー主流化評価を実施予定だったグルジア・カントリーオフィスに派遣が決まり、インターン中は主に2006年‐2010年カントリープログラムにおけるジェンダー主流化評価の実施及びその報告書を作成しました。

ジェンダー主流化評価は、ユニセフ評価室のGender Mainstreaming Self-Assessment(2007)を元に、グルジア・カントリーオフィス職員全員の協力を得て、1.評価表アンケート記入、2.プログラム担当官とのフォーカスグループ討議、3.内部文書の見直し、という3段階で実施しました。実施後、様々なジェンダー主流化への取組みが進んでいるものの、その取組みを母子保健の分野のみならず、グルジア・カントリーオフィスが支援しているすべての分野(障害を持つ子ども、児童養護施設への支援、刑務所服役中の若者への支援、父親への育児支援など)においても広げ、強化する必要があることがわかりました。そのために、今後はカントリーオフィスレベルでもグルジア国内の状況を踏まえながらジェンダー主流化への取組みに関する政策やアクションプランを立案すること、また職員への研修制度をより充実させることなどを提言しました。この評価報告書では、グルジア・カントリーオフィスの支援分野において、ジェンダー主流化がどのように、どの分野で取り組まれてきたかという分析をしましたが、この作業を通じて、グルジア・カントリーオフィスの支援活動の全体像を垣間見ることができました。

そのほか、特別支援教育・児童養護施設の視察や、地方行政関係者とのミーティング、国内避難民(IDP: Internally Displaced Persons)居住地域の教育レベルモニタリングなどのため多くの地方(クタイシ、スバネチ、ガルダバー二、ゴリなど)を訪ねました。特に、首都トビリシから1時間ほど離れたIDP居住地域を訪ねたとき、紛争後の雇用問題が復興、開発の一つの要ではないかという印象を持ちました。また、これらのフィールドミッション中は、地元の人々からグルジア紛争下の生活状況や政治情勢などについても教えていただき、グルジアの内実を知る良い機会になりました。

出発前は不安もありましたが、派遣前に日本ユニセフ協会とユニセフ東京事務所の方から、ユニセフの活動全般についてご説明いただいていたおかげで、現地でもすっと業務に入ることができたように感じます。今振り返れば、実際に現場でインターンをさせていただいたからこそ学べたことがたくさんありました。この場をお借りして御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

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