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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

UNICEF コソボ速報No.7

1999年8月5日

コソボへの難民の帰還進む

 6月上旬の和平合意から約2ヶ月が経過した現在、コソボ周辺国・地域に避難していた難民の約82%にあたる77万人以上がコソボ自治州に帰還し、それに伴いユニセフ(国際連合児童基金)はコソボ自治州内での人道援助を拡大している。長期間に及んだ紛争の結果、コソボ内では学校や保健所などの公共施設だけでなく多数の一般家屋も破壊されており、冬の到来の前に50万人以上の子どもたちが緊急支援を必要としている。

ユニセフによるコソボ自治州内の小学校調査結果

 ユニセフは国際治安部隊のコソボ駐留開始後、コソボ自治州内にある小学校の被害調査を行った。コソボ自治州内にある小学校約1000校の内、これまでに394校の調査を終え、現在は残りの小学校の調査を行っている。これまでに判明した被害状況は以下の通り。

被害の内容 割合
完全に崩壊か深刻な被害を受けた小学校 43%
ドアや窓などの校舎の一部を修繕する必要のある小学校 95%
屋根の新設か修復が必要な小学校 56%
トイレなどの衛生設備が機能していない小学校 98%
下水設備が整備されていない小学校 55%
電気設備が機能していない小学校 62%
敷地内の地雷の除去を終えていない小学校 43%

1999年7月 ユニセフ調べ

ユニセフ・コソボ内での人道援助活動を拡大

ユニセフはコソボ自治州の州都プリシュティナに国際職員27人、国内職員35人を配置し、教育、保健、地雷被害の予防の分野を中心に、他の国連機関やNGOと連携して子どもや女性への人道援助にあたっている。

教育

 上述の調査の通り、多くの小学校が紛争、略奪の被害を受けている。ユニセフは9月からの新学期の開始に向け、すべての子どもが小学校に通える環境を整えるべく学校の再開支援を行っている。教員の訓練に加えて、新学期開始前に各小学校に配布する次の備品の調達作業をこれまでに行っている。

机…30,000セット/椅子…60,000セット/黒板…2,000セット/教員用机…2,000セット/教員用椅子…2,000セット/教室備品セット…1,000/レクリエーション用品セット…1,000セット/児童用教具セット…100,000セット/ストーブ…1,000セット/冬用テント…400セット/その他

 コソボ自治州ジャコビツアにあるムスタファ・バキヤ小学校では、9月からの新学期開始前より、数ヵ月に及ぶ授業の遅れを取り戻すための補習学校が開設され、ユニセフは教科書や机、椅子、ノートなどの提供を通じ再開を支援している。この学校の建物は、3月以降セルビア警察が指令本部として使用していたために損壊を免れ、比較的早期の授業再開が可能となった。
「友達も先生もみんな元気で、すごく嬉しかったわ
」 「学校に戻れて本当に嬉しいよ。友達に会えるからね」
 数ヵ月続いた辛い日々から解放され、無事に友達と再会できた喜びを子どもたちが実感した瞬間だった。
 しかし数ヵ月間に及んだ避難生活は、多くの子どもたちの心に傷痕を残している。
ムスタファ・バキヤ小学校のリヤズ・ダイア校長によると、全校生徒2500人のうち、約25%が暴力などのつらい体験によるトラウマ(精神的外傷)に苦しんでいる。
 友達と遊び、語り合うこと。それはトラウマ治療に非常に効果的であることが実証されていて、ユニセフの心理的治療プログラムにも広く取り入れられている。心の奥にしまいこんだ悲しい体験をお互いに語り合い、思いを共有することで孤独感から解放され、友達と楽しく遊ぶことで仲間との連帯感や信頼が生まれ、前向きに生きる気持ちを徐々に取り戻していくことができる。

保健

 ユニセフは、紛争中マケドニアやアルバニアなどに避難していたコソボ難民を対象に大規模な予防接種活動を行ったが、コソボへの難民の帰還が進む中、コソボ内の崩壊した保健サービスの再建を支援することが現在の急務となっている。ユニセフは1歳から2歳までの30,000人の乳幼児を対象に破傷風の予防接種の実施を予定しており、これにあわせて、予防接種用資材やワクチン保冷機材の提供、スタッフの訓練も行う。またポリオ、ジフテリア、百日咳、おたふく風邪、はしか、BCGなどの予防接種も計画している

地雷

 コソボ自治州内では多数の地雷や不発弾の存在が確認されている。ユニセフは、コソボ自治州及びマケドニア、アルバニア、モンテネグロにおいて、地雷の危険性の認知向上を目的に、チラシやポスターの制作と配布、メッセージのTV放映、地雷の危険性に関する教育者の育成を行い、地雷に関する事故の防止に努めている。難民のコソボへの帰還が本格化する直前には、アルバニアの難民キャンプを中心にポスター30万枚、チラシ26万枚を配布してコソボ帰還後の地雷や不発弾に対する注意を呼びかけた。

緊急アピール

 ユニセフは、予想以上に被害が甚大なコソボ自治州内での人道援助の規模を大幅に拡大し、これに伴い増加した活動予算に対する国際的な支援を呼びかけている。

分野別活動予算 (単位:米ドル
分野 変更後の予算 現在の資金 不足額
保健と栄養 24,926,000 14,730,303 10,195,697
教育・地雷事故予防 22,178,000 17,163,970 5,014,030
特に支援を必要とする子どもの援助 10,484,000 5,283,282 5,200,718
社会動員とアドボカシー 260,000 105,000 155,000
調査、モニタリングなど 10,291,000 6,861,733 3,429,267
合計 68,139,000 44,144,288 23,994,712

これを受けて日本国内では、財団法人日本ユニセフ協会(東京都新宿区 会長:澄田 智)がコソボの子ども達を支援する緊急募金の受付けを行っている。

コソボ緊急募金口座
郵便振替   00110-5-79500
口座名義  財団法人 日本ユニセフ協会(通信欄に「コソボ」と明記 )

・送金手数料は郵政省のご協力で免除されます。
・当協会への募金は寄付金控除が認められます。

お問合せ先
(財)日本ユニセフ協会
[報道関係者]
広報室 :03-3355-0161
[一般]
協力事業部 :03-3355-3222

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