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ユニセフ協会からのお知らせ

紛争下の子どもたちに、かけがえのない「子ども時代」を!
元子どもの兵士が書き綴った過酷な半生
『戦場から生きのびて—ぼくは少年兵士だった』発売

【2008年2月8日 東京発】

UNICEF/ HQ95-0172/Giacomo Pirozzi
© UNICEF/HQ07-0095/Susan Markisz
昨年2月、ニューヨークのユニセフ本部で行われた『戦場から生きのびて』発表会にて

 ぼくの分隊はぼくの家族、
 ぼくの銃はぼくを生かせて守ってくれるもの、
 そしてぼくの現実はいつも「殺すか殺されるか」だった。

1993年のある日、12歳だった「ぼく」は、隣町で開かれるタレントショーの演芸会に参加するために、ラップミュージックの友だち3人と旅立ちました。カセットテープをポケットいっぱいにつめこんで、だれにも「行ってきます」とも言わずに、そして二度と戻らない旅とも知らずに・・・・。

1991年から2002年まで内戦が続いた西アフリカの小国シエラレオネ。12歳から15歳まで、内戦のまっただなかで闘った子どもの兵士が、兵士としての体験、そして社会復帰までの経緯を綴った本が、日本で発売されました。

戦場から生きのびて

著者:イシメール・ベア
   (Ishmael Beah)

 

訳者:忠平美幸
   (ただひら・みゆき)

 

四六版/本文344ページ

 

1600円(税別)

 

発行:河出書房新社

 

ISBN 978-4-309-20486-4
Cコード 0098

 

著者 イシュマエル・ベア氏
UNICEF/HQ07-0097/Susan Markisz
© UNICEF/HQ07-0097/Susan Markisz

1980年、シエラレオネ生まれ。1993年、12歳の時に、政府軍の少年兵士として前線での激しい戦闘に参加させられました。1996年、ユニセフに保護され、リハビリ・センターで生活。
これをきっかけに、その後、子どもの権利実現を訴える活動に積極的に関わるようになりました。米国・オバーリン大学で政治学を修了し、引き続き、世界的に子どもの権利実現のための活動を続けています。

ユニセフは、2007年11月、子どもの権利条約採択満18年を記念し、イシュマエル氏を「紛争の被害にあった子どもたちのための代弁者(Advocate for Children Affected by War)」に任命しました。

「子どもたちが、自分自身の声で発言できるようになり、私たちがその声を響かせ続けなければいけません」。任命式の席上、イシュマエル氏は、こう訴えました。

訳者 忠平美幸さんからのメッセージ

著者イシュマエル・ベアが生まれ育った西アフリカのシエラレオネには、語り部の文化があります。本書の最後にも、満天の星の下、子どもたちが焚き火を囲んで座り、老人の語る寓話に耳をかたむける場面が出てきます。翻訳を進めながらわたしは、イシュマエルの手記全体に、そんな伝統文化を受け継ぐ「何か」、聴き手の想像をかきたてる語り手の妙技のようなものを感じていました。

UNICEF/HQ98-0494/Giacomo Pirozzi
© UNICEF/HQ98-0494/Giacomo Pirozzi

少年の目をとおして見た内戦を、思い出すままに書きつづったものですから、本書には正確な日付や場所などが、まったくといっていいほど出てきません。もしかしたら本人の記憶違いや勘違いも混じっているかもしれません。それでもなお、この物語には圧倒的な説得力があります。

当時12歳だったイシュマエル少年は、「行ってきます」さえ言わずに家を出たあと(明日帰ってくるつもりの、ちょっとした外出だったからです)、道中で戦禍に巻き込まれてしまいます。悲鳴をあげて逃げまどう人びと、飛び交う銃弾、廃墟と化した村々、そして死体の山。おぞましい光景を目のあたりにし、命からがら、ぎりぎりの逃避行のすえたどりついた政府軍キャンプで、気づいたときには、自分自身が殺人マシーンに仕立てあげられていた・・・。

こうした戦いのむごたらしい場面や、少年兵が「洗脳」されていく過程、そしてその後更正施設に入って人間性を取り戻すまでの苦闘は、たしかに衝撃的ですが、それとは別に、不思議とわたしの印象に残っているのは、イシュマエルが逃げる途中で知り合った同年代の仲間たちとの友情や、生まれて初めて大西洋を見たときの興奮、芳醇なパーム油を使った素朴で美味しい郷土料理、そして彼が幼かったころの楽しい思い出などです。

戦火とは無縁のシエラレオネが彼のなかではまだ生きていて、話の随所にちりばめられているのです。ああ、わたしが感じた「圧倒的な力」——外からやってきた人間が書く、いかに正確な報道記事からも伝わってこない説得力——は、これなのかもしれません。物語のなかへと読者を引きずりこんでゆく著者イシュマエルの力量は、こんなところにも発揮されているのでしょう。

UNICEF/HQ98-0494/Giacomo Pirozzi
© UNICEF/HQ98-0494/Giacomo Pirozzi

シエラレオネの内戦によって、たくさんの生命が奪われました。少年兵士として戦場に立たされた子どもたちは、心に深い傷を負い、今も苦しんでいます。その現実があまりにも強烈なので、ともすると見過ごされがちですが、彼らの故郷の伝統文化、人と人とが信頼しあえる地域社会、美しい自然といった、子どもたちが幸せに、のびのびと育つうえで不可欠な環境も、この戦争によって多くが壊れ、消えてしまったにちがいない——本書を読むと、そのことに気づかされます。

今回、日本の読者に向けてイシュマエルは「世界のいろいろな文化に接してほしい・・・異なる文化に接して異なる考え方を知ることは大切です」というメッセージをくださいました。本書を読み終えたら、どうぞ目をとじて思いうかべてください。彼の故郷の文化を。あの国に起こった悲惨な内戦と、それによって失われたものの大きさを。

※著者名について今回ご紹介する書籍では「イシメール」と表記されておりますが、日本ユニセフ協会では、これまでホームページや各種発行物などで同氏を紹介した際に用いた例に順じ、「イシュマエル」と表記しています。

シエラレオネという国

シエラレオネはギニア、リベリアと国境を接し、アフリカ西部にある人口580万人ほどの国です。
世界で最も五歳未満児死亡率が高い国のひとつです。
主要産業はダイヤモンドはじめとする鉱業とカカオ、コーヒー等の農業です。1792年からイギリスの植民地となりますが、アフリカ各国の独立に影響され、1961年4月27日に独立を果たしました。
1991年に反政府軍の蜂起により10年近く内戦が続き、5万人もの人が命を落としたと言われています。
2002年5月には大統領・議会選挙が実施され、カバ候補が再選しました。
その後同大統領は国家非常事態の終了を宣言し、約10年続いた内戦に終止符を打ちましたが、紛争の爪あとは深く、今でも子どもたちに深刻な影響を与えています。

>>シエラレオネでのユニセフの活動、子どもたちのストーリーはこちら

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