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ユニセフ協会からのお知らせ

ユニセフ・イノチェンティ研究所 先進工業国の子どもたちに関する最新レポート発表
質の高い早期の幼児教育とケアを!

【2008年12月11日 イタリア・フィレンツェ発】

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ユニセフ・イノチェンティ研究所は、11日、世界の先進工業国(OECD加盟国)の子どもたちの幼児期に、大きな変化が訪れているという研究報告書(Report Card 8“The Childcare Transition(子どものケアの推移)”)を発表しました。

本報告書「子どものケアの推移」によると、先進工業国で台頭している子どもの多くは、家庭外保育のもとで幼児期の大半を過ごしています。富裕国の3歳〜6歳の子どもの約80パーセントは、何らかの形で早期幼児教育とケアを受けています。3歳未満では、OECD加盟国平均で25パーセント、国によっては50パーセント以上に達しています。

また、過去10年間、多くの国々で、家庭外保育を受ける1歳未満の子どもたちの急増が見られます。これらの変化は、外で働く女性たちが家以外のところで雇用されているという女性にとっての新しい機会を示すものでもあり、また、新しいニーズを反映しているものともいえます。そして、家庭が貧しければ貧しいほど、女性は出産後すぐに仕事に戻らざるをえなくなっているのです。それも、専門的な技術を要しない単純労働、低賃金の労働に戻らざるをえなくなっています。

こうした変化が経済的に発展している国々で起きていると同時に、一方、乳幼児期の脳の発達を解明する科学が進歩したことにより、出生後数ヵ月〜数年の間に、子どもたちが質の高いケアを受けられるかどうか、ほかの人たちとの間にさまざまなやりとりがあるかどうかが、子どもの成育と発達にとって重要な意味を持っていることが確認されています。こうしたことを考え合わせると、子どものケアに変化が起きているということは、大きな利点をもたらす可能性があると共に、大きな不利益をもたらす可能性もあることを意味している、と本報告書では述べています。

さらに、質の悪い子どものケアは、将来の学習の基盤を弱体化し、学習をこころもとないものにしかねない、と報告書は指摘します。そして、認知技能と言語能力の発達は、心理社会的面、感情面での発達にも影響を与えるのだ、と。

「質の高い早期幼児教育とケアは、子どもの認知技能、言語能力、情緒的・社会的な発達を促す大きな可能性を秘めています。」ユニセフ・イノチェンティ研究所のマルタ・サントス・パイス代表は、話します。「また、学業成績を上げることに役立ち、小さい時から子どもを不利な立場に追いやることを避けることができ、参加を推進し、良き市民となることへの投資、女性の地位向上への支援も進めることになるはずです。」

OECD加盟国の中には、子どものケアの問題にしっかりと取り組んでいる国もあり、そうした国では、子どものケアが持つ潜在的利益を実現するような政策を押し進めている、と本報告書では指摘しています。逆に、ほかの国々では、家庭外保育が外れた方向に進み、質があまり保障されていない方向に向かっている、とも指摘しています。

学問的な知見、政府の専門家の知見を引用しながら、本報告書は、OECD加盟国の早期幼児教育とケアの前進具合をモニターし、比較することができる、10のベンチマーク(評価基準)を提唱しています。

「提案されている10のベンチマークは、幼児期に良い結果をもたらすための最低基準を確立するための初めの一歩と考えていただきたいと思います。」(マルタ・サントス・パイス代表)
現在、スウェーデンだけが、10項目全てのベンチマークを満たしています。アイスランドが9項目を満たし、デンマーク、フィンランド、フランス、ノルウェーが8項目を満たしてこれに続いています。これらの6カ国は、早期幼児サービスへの財政支出額が大きい政府6カ国と同じです。

その他の多くのOECD加盟国は、最低許容基準を満たすためには、早期幼児サービスに対する支出を、現行の2倍に増やさなければならない、と本報告書は締めくくっています。

本報告書内が提供する各種データ上での日本のランクは以下のとおり:

  • 10のベンチマーク中、日本は4つを満たし(ドイツ、イタリア、ポルトガル、韓国と同数同位)、調査対象25カ国中14位(注:1位=1国、2位=1国、3位=4カ国、7位=4カ国、11位=3ヶ国)
  • 育児ケアサービスを受けている0−3歳児の割合=19位(25カ国平均以下)
  • 就学前教育を受けている3-6歳児の割合=10位(25カ国平均以上)
  • 取得可能な育児休業の長さ・手当ての額等の指数=22位
  • 育児サービスや就学前教育への公的資金の対GDP比=22位(25カ国平均の半分以下)
  • 乳児死亡率=3位
  • 出生時低体重児の割合=25位
  • 予防接種普及率=2位
(※これらの総合評価として、報告書は、ベンチマークの一つ「乳幼児に必要な最低限の保健サービスを提供している」を満たしているとしています)

ユニセフ・イノチェンティ研究所は、ユニセフ本部(ニューヨーク)の一機関として、ユニセフの主な活動の現場である開発途上国のみならず、先進国を含め、世界の子どもたちを取り巻く様々な問題を、調査・研究している組織です。

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