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HOME > 特集:栄養不良 > 【連載特集】世界の栄養不良・いろんな話 第七回
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栄養不良になるってどういうこと?

連載 第7回 世界の栄養不良・いろんな話

第7回_01 / 02

■ミャンマー、白米へのこだわりが脚気の要因?

日本

(質問・畑生理沙さん)
白米との上手な付き合い方・・・。難しいですね。日本でもそうですが、ミャンマーでも玄米よりも白米の方が価値の高いものとされているのでしょうか・・?

ミャンマー

<錦織信幸>

そのとおりです。白米の中でも白く白く精米しきった米の方が高く売れるそうです。ビタミンB1は精米すればするほどなくなってしまうので、栄養価が低いもののほうがが高く売れているわけです。 対策のひとつとしてある地方では、白米ではなくて半分づき米のプロモーションをしています。 これはまさに真っ向から白米を中心にした生活習慣に挑んでいることになります。傾向としてプロジェクトとして力が入っているとそれなりに成果を挙げるかもしれないけど、それが長続きするかは今後の課題です。

卑近な例ですが、私は小さい頃に母親が家に玄米を導入して、大変な辛い思いをしたことが今でも忘れられません。冗談みたいな話ですが子どもながらに本当に辛かったです。それこそ泣きながら食べてました。たぶん今流行の発芽玄米や、玄米がおいしく炊ける炊飯器とかなかったときだから、よりいっそう辛かったんでしょう・・・。いくら体に良いと言われても、どうして白米になるものをこういう形で食べなくちゃいけないか理解できませんでした。いま自分が脚気対策の仕事していることを考えると本当に笑い話みたいですが。

欧米人の同僚は白い小麦粉を全粒粉に変えるぐらいの違いとしてしか考えていないようですが、やはり白米に対するこだわりは日本人だからこそわかる部分があります。日本だってだいぶ前に日本の米が不作でタイ米が導入されたときに現れた国民の不満はものすごいものでしたよね?食生活にかかわる行動変容、これは永遠の課題です。

■栄養不良と寄生虫の関係は?

日本

(質問・rsaekiさん)
ネパールで支援をしている子どもが、突然発作を起こしてばたばたと倒れるので、病院で検査をしていただいたところ、驚いたことに寄生虫が頭にいて悪さをしていたことが判明いたしました。 ネパールではトイレの習慣がないので特に田舎に住んでいると、このようなことはよくあるとのこと。 寄生虫に対して、なにか対策は行われているのでしょうか? また寄生虫とは昔日本でもよくいたギョウチュウや回虫などでしょうか? それともネパール独特の寄生虫なのでしょうか?またよくいわれるメジナ虫などもネパールにはいるのでしょうか?詳しい事情が知りたかったので教えていただけるとうれしいです。

ミャンマー

<錦織信幸>

ご紹介のネパールのケースは、おそらく条虫(サナダムシ)の卵が脳の中で腫瘤を形成するというものです。 確かにインドなどでは、てんかんなどを疑われて病院で調べたらサナダムシだったというのはまれではないと思いますが、寄生虫症全体の中でみれば極めてまれな事例です。

サナダムシは本来は豚や牛の筋肉に腫瘤を作って、その肉を調理が不十分な状態で食べた人が感染してその人の腸の中に住み着くという虫です。感染した人の便に虫卵が排出され、その便を食べた豚や牛がまた感染して筋肉に腫瘤をつくるというサイクルを繰り返します。脳に腫瘤を作ってしまうのはサナダムシ自身にとってもいわば事故で、人が虫卵を摂取してしまった場合に起こります。

サナダムシは長期にわたって腸管の中に生息し人の摂取した栄養を奪うので、もちろん栄養上の問題を生じるのですが、その発生頻度などから栄養対策の中でターゲットとする寄生虫としては中心ではありません。 ギョウチュウもお尻の周辺が痒くなったりすることで学習能力などに影響をおぼよすという話もありますが健康被害としては最小です。

では栄養対策にとって重要な寄生虫にはどういうものがあるかというと、回虫(カイチュウ)、鞭虫(ベンチュウ)、鈎虫(コウチュウ)の3つが挙げられます。回虫は体長30センチぐらいと長くて、しかもたくさん住み込むことがあるため、ただでさえ少ない子ども腸管の容量を低下させます。食欲低下や嘔吐などの原因にもなります。鞭虫は3〜5センチの小さな虫で、盲腸や直腸に虫がたくさん寄生して炎症や出血をきたすようなケースでは貧血などの原因になります。

おそらくこの3つの中で一番栄養と関連が深いのは最後の鈎虫です。こいつはやはり1センチ程の小さい虫ですが、その名のとおり牙を持っていて、小腸の栄養の吸収にとって重要な部分にかじり付いたまますごします。噛り付いて何をしているかというと小腸の粘膜から血液を飲んでいるのです。虫は小さいのですが、数がたくさんになると、失われる血液の量は多くなります。またこいつが噛り付いている事で小腸からの栄養分の吸収が悪くなります。

回虫と鞭虫は糞口感染ですので衛生環境、特にトイレと手洗いが大きな予防の柱になります。鈎虫は同様に糞口感染の場合と、土にいる子虫が足の皮膚を通して感染する場合がありますのでサンダルやゾウリの使用も重要な予防対策になります。 ユニセフが多くの国で行っている対策はもちろんトイレなどの衛生設備の設置、手洗いなどの衛生行動の増進があります。そして寄生虫の感染率がある程度以上高い場合には子どもや妊婦さんに対して一斉駆虫を行います。

プランピー・ナッツ
© UNICEF/HQ05-1627/Myo Thame
虫下しのタブレットを飲む小学生たち、  ミャンマー
 

ミャンマーでは半年に1回、2才〜9才の子ども全員と妊婦さんに対して1回1錠飲むだけの駆虫剤を提供しています。薬の値段は1錠2円弱で、ミャンマー全土では年間3000万円くらいかかります。

これらの寄生虫の世界的な分布はそれぞれの虫の生物学的特長、気候、衛生環境などによって左右されます。

いくつかの特徴を挙げますとネパールを含めた南アジアは鈎虫による貧血(Hook Worm Aneamia 鈎虫貧血という言葉があります)がかなり深刻な地域があります。ミャンマーも貧血はとても深刻ですが鈎虫は南アジアほどは多くありません。でもいずれにしてもメインのターゲットはミャンマーでもネパールでも同じ上記3種の虫です。回虫やギョウチュウは結構どこにでもいるコモンな虫です。

今の日本で寄生虫が出たとしたらギョウチュウが一番多いでしょうか。メジナ虫はかなり変り種の大きな寄生虫でアフリカ、中近東に多く分布します。インドにも分布していましたがほぼ撲滅されていると思います。

今すぐできること

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ミャンマー 錦織信幸(にしきおりのぶゆき) UNICEFミャンマー事務所 保健・栄養担当プログラム・オフィサー 錦織信幸(にしきおりのぶゆき) エチオピアから UNICEFエチオピア事務所 栄養担当専門官ニュートリション・スペシャリスト 岡村恭子(おかむらきょうこ) 岡村恭子(おかむらきょうこ) エチオピアから