メニューをスキップ
HOME > 特集:栄養不良 > 【連載特集】世界の栄養不良・いろんな話 第七回
よくあるお問い合わせ
財団法人日本ユニセフ協会

栄養不良になるってどういうこと?

連載 第7回 世界の栄養不良・いろんな話

第7回_01 / 02

■自然災害時の緊急支援の鉄則は?

日本

(質問・畑生理沙さん)
エチオピアとミャンマーとは、深刻な洪水が多いと伺っております。自然災害の際の緊急支援において、 政府とはどのように連携しながら活動されているのですか?ユニセフの活動の中でも、緊急支援は、特に政府との協力が不可欠な分野なように思われますので、ぜひ伺ってみたいです。

■地元政府との連携が不可欠

エチオピア

<岡村恭子>

緊急支援は一刻を争うので、多くの援助機関が物資を調達して配布したり、チームを送ったりします。政府が機能しなくなってしまった場合等を除いては、やはり政府との連携は必要です。

デモ隊との衝突等があるような政治状況でも、津波のような突発的な自然災害の場合は、政治対立や利害を超えた緊急支援を優先させる場合が多いように思います。ただ、干ばつ、飢餓、紛争などの場合は、徐々に徐々に状況が悪化していくことが多いので、政府が状況を素早く認知しなかったり対応をとらなかったりすることによって、より多くの人々が危険にさらされます。人命がたくさん失われる前に政府と対話し、素早く協調して緊急支援に乗り出さなければならないので、普段から状況を素早く把握するための体制を整えておくこと、人道問題に対して中立的に政府と対話できる関係を構築しておくこと、対応策を準備しておくことなどが重要です。

子どもは、紛争であれ自然災害であれ、緊急事態が起こって厳しい状況におかれた場合に、 深刻な影響を受けます。

付け加えると、子どもの栄養状態は、緊急の事態を如実に表す指標であり、栄養状態が急激に悪化した子どもは死に至る確立がとても高くなるので、緊急支援の際の状況把握の手段や対応策検討の際の情報として使われます。

ミャンマー

<錦織信幸>

ご指摘のとおりミャンマーは洪水、地震、サイクロン(日本の台風みたいなもの)などの災害が多く、自然災害などに対する緊急対応もユニセフの大事な仕事のひとつです。 災害が発生した場合、どこで何が起こって、どんな状況になっているのか、ユニセフとして出来るだけ正確な情報を迅速に集めます。そのために視察チームを現地に送ることもよくあります。そして被害状況にあわせて、あるいは現地でもっとも必要とされている事を考慮に入れながら援助の内容や方法を決定します。

ユニセフではCore Commitment for Children in Emergencies(略:CCC)という大事な原則を掲げていて、自然災害であっても紛争でもあっても、そこにいる子どもたちのためにこれだけは保障しなければいけないという対応を定めています。この中では、はしかの流行を予防するための予防接種や安全な飲料水の提供とともに、栄養不良に対する対応も重要な柱になっています。

実は「自然災害によって栄養不良が深刻な状況になっている」ということはミャンマーではあまり多くありません。むしろ慢性的に栄養不良が問題になっている地域がもともとあって、そこにちょっとした「きっかけ」が加わって、事態が悪化するようなことがよくあります。たとえばミャンマーのバングラデシュ国境に近いラカイン州という地域では、今年の雨季には長雨のために作物の価格が高騰し、栄養不良の子どもが増加しました。ユニセフは現地ですでに活動しているNGOと協力し、この地域で栄養不良の子どもたちを支援する体制を強化しました。

こうした急激な事態の悪化に対して対処するという方法と、岡村さんが書き込まれた地域の人々のキャパシティをじっくりと強化していくという方法、どちらの視点も重要だと思います。

■軍事政権下での活動の難しさは?

日本

(質問・ヤックル)
ミャンマーといえば、この間僧侶が射殺されるなど軍事的な面で問題が起きているようですが 活動に何か支障をきたすことは無いのでしょうか? ミャンマーという国としても大変な事件だと思いますがどうでしょうか?

■困難だからこそ、やりがい感じる

ミャンマー

<錦織信幸>

ミャンマーの政治情勢とその中での援助の難しさは、それだけでこの掲示板の議論がいっぱいになってしまうほどお話できることはたくさんあります。平和的なデモ行進をしている僧侶や一般市民に対して銃口向けるなどということは、絶対にあってはならない非人道的な行為です。今回のデモはミャンマーの人々が長い間、非民主的な軍事政権のもとで抑圧されてきたことに対する不満の表れであり、ヤックルさんのご指摘のとおり、1988年(前回の大規模なデモ)以来の大きな出来事です。軍事政権の力による弾圧に対しては国際社会の非難も高まっています。なかには私たちに対して軍事政権下のこの国で援助活動をしていることを非難する声もあります。

プランピー・ナッツ
© UNICEF/HQ95-0312/Franck Charton
ユニセフが支援するデイケアセンターで遊ぶ小学生の子どもたち

あまりにも大きな話題なのでこの企画の中であまり多くのことを語るつもりはないのですが、ひとつだけ強調しておきたいことがあります。それは国の政治体制やそれを取り巻く国際社会の情勢がどうであろうとも、その国に生まれてきた子どもたちには何の責任もなく、彼らも他の国に生まれた子どもと同じように健康に生存し、発達し、教育を受け、恐怖や搾取から自由である権利を等しく持っているということです。

第一次世界大戦中、あるイギリスの援助団体が敵国の子どもたちを支援したとしてイギリス国内で非難を受け、その責任者が裁判にかけられたことがありました。もちろん敵を支援したという罪です。そのとき責任者の彼女は、「(自分は敵を支援したという罪に問われているが)私には11歳以下の敵はいない」と証言したという話が残っています。子どもは敵でも味方でもない、みな等しくその権利を保障されるべき存在であるという考えは、いまでもユニセフの中にも生きている大事な原則です。

このミャンマーというやや特殊な、制限の多い環境の中でも、この困難のなかで一生懸命に生きている子どもやお母さん達のためにできるだけの支援を、さまざまな工夫を凝らしながら実施していくことは、困難というよりもより大きなやりがいだと感じています。

お便りお待ちしています!
本連載特集の中でご紹介してきました2人の日本人ユニセフ・スタッフへのご質問やコメントを受け付けています。皆様からのお便り心からお待ちしております。
E-mail   FAX 03-5789-2033

今すぐできること

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る

ミャンマー 錦織信幸(にしきおりのぶゆき) UNICEFミャンマー事務所 保健・栄養担当プログラム・オフィサー 錦織信幸(にしきおりのぶゆき) エチオピアから UNICEFエチオピア事務所 栄養担当専門官ニュートリション・スペシャリスト 岡村恭子(おかむらきょうこ) 岡村恭子(おかむらきょうこ) エチオピアから