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公益財団法人日本ユニセフ協会

ギニア:
女性性器切除を受けた女性、15〜49歳の96%
12歳少女の訴え

【2013年11月26日 ギニア・ドゥブレカ発】

ギニアの15歳〜49歳の女性96%が女性性器切除を受けている。
© UNICEF Guinea/2013/La Rose
ギニアの15歳〜49歳の女性96%が女性性器切除を受けている。

世界では女性性器切除(FGM/C)の根絶に向け、大きな動きが起こっています。1万以上のコミュニティ、15カ国800万人の人々が、女性の心身に有害な慣習の根絶に向けた取り組みに力を注ぐことを宣言しています。

2014年11月に子どもの権利条約が25周年を迎えます。ユニセフによる女性性器切除の根絶に向けた継続的な支援は、大きな成果を遂げてきています。しかし依然として、さらなる取り組みが必要とされています。

「なぜ私は女性性器切除を受けなくてはいけなかったのだろう」-人生を一変させる儀式を強いられた少女は、その答えを探しています。そして、女の子の心身にダメージを与え、時には死に至らせるこの慣習に、反対の声を上げています。

* * *

楽しみにしていた夏休み

12歳のファトゥーさんは学年末の授業を終え、夏休みを待ち遠しく思っていました。どこにでもいる普通の女の子のように、友達と遊び、おいしい食べ物を食べ、音楽を楽しみながら過ごすことを楽しみにしていました。夏休みの予定について兄弟と話していた時、叔母さんがファトゥーさんを散歩に誘いました。

叔母さんと二人で歩いていると、母親や祖母、叔母に連れられた女の子たちも集まってきました。そして、一軒の家にたどり着きました。女の子たちが身体を洗うための場所です。

「何かおかしいと感じました。でも、目隠しをされるまで、怖いとは思いませんでした」と、ファトゥーさんが話します。

「お風呂に入った後、タオルを体に巻いて部屋に入るように言われました。他の部屋から、女の子たちの泣き叫ぶ声が響いていました」

ファトゥーさんは、女の子たちに何が起こっているのか、そしてこれから自分に何が起こるのか、全く想像ができませんでした。

「その部屋に集められた女の子のうち、身長が低い女の子から順番に別の部屋に連れていかれました」

12歳の女の子の平均的な身長だったファトゥーさんは、それほど待たされることなく施術が行われました。女性性器切除は、伝統的な“医師”が施術を行います。麻酔も、消毒も、専門の手術器具も使用しません。

女性性器切除を受けた女性、15-49歳の96%

女性性器切除について耳にしたことがある人は多くいるでしょう。そして、施術の方法について、詳しい記述を読んだことがある人もいるかもしれません。

この慣習は、女性性器を取り除くことで若い女性の性欲をコントロールできるという考えから行われています。しかし、女性性器切除でその目的を果たすことができるどころか、施術を受けた女の子は、命を落とす危険性、感染症や不妊のリスク、そして精神的なトラウマに苦しみます。

あまり知られていませんが、ギニアなど一部の国では、この儀式の準備のため、母親や祖母、叔母が織物工場へ旅をします。約100メートルの布を買うためです。女の子が学校で授業を受けている間、その布でベールやスカート、上着などの特別な衣装一式を作ります。

女の子たちの身に起こる恐ろしい出来事は、この旅から始まっているのです。

ギニアでは、15歳から49歳の女性の96%が女性性器切除を受けています。そのうち22%は4歳になる前、60%は9歳の誕生日を迎える前に施術が行われています。

コミュニティに根付く慣習

女性性器切除根絶のためにコミュニティレベルでの人権教育に力を入れている国際NGOとユニセフのスタッフに、ファトゥーさんは、母親の許可を得たうえで、自身の経験を話してくれました。コミュニティの女性や年配の人のなかには、この慣習が女の子にもたらす負の影響を知り、考えを改めた人たちもいます。

女性性器切除はイスラム教の宗教的慣習だと、多くのギニア人が信じています。しかし、宗教指導者はその事実を否定し、ユニセフの調査においても、宗教とこの慣習との関連が認められないことが分かっています。女性性器切除はイスラム教やキリスト教の成立よりも前から存在しており、どの宗教の教典にも、この慣習の実施を求める記述はありません。それにもかかわらず、宗教上必要な儀式であると、多くの人が信じていることも、この慣習が依然として広く行われている理由のひとつです。

ギニアでは1965年から女性性器切除が違法になっています。そして2000年の法改正の際に、更に強化されました。ユニセフ・ギニア事務所は先日、首都のコナクリで、子どもへの暴力に関する法律施行の講習会を開催し、法律があるにもかかわらず適用が難しい現状を、課題に挙げました。

「女性性器切除は伝統的な慣習です。地域の人々の信仰に奥深く根付いているものなのです」と、ラマ司法補佐官が語ります。

ギニアには女性性器切除を禁止する法律があるにもかかわらず、この慣習の根絶に向けた取り組みは進んでいません。警察官や司法当局が子どもの権利や、女性性器切除が女の子や女性に与える甚大な危害を理解していたとしても、実際に法律を行使することは極めて難しいものです。

「たとえば、祖母が娘を女性性器切除に連れて行こうとしていると正式な訴えが父親からあった場合、私たちが間に入り、祖母を説得します。ギニアでは、父親が祖母の意見に反対すると、家庭が崩壊してしまうということがよくありますから」(ラマ司法補佐官)

農村部のコミュニティでは、家族という単位がとても大切にされており、家族がいなくては生活をすることができません。ですから、女の子を家族から引き離して保護することは、とても難しいのです。

12歳の少女の訴え

施術を終えたファトゥーさんは、他の女の子と同じように、叔母さんが作った衣装に身を包みました。そして、女の子全員の傷が回復するまで、小屋での生活を強いられました。

「多くの女の子が大量に出血していました。あまりのショックで病気になる子もいました」3、4時間ごとに、“医師”が小屋を訪れ、女の子たちの容態を確認していました。そしてファトゥーさんが家に帰ることができたのは、夏休みが終わって再び新学期が始まる3カ月後のことでした。

ファトゥーさんのように、勇気を出して自分の身に起こった出来事を打ち明けることができる女の子は、多くはありません。裏切り者扱いされてしまうからです。ファトゥーさんは国際NGOのスタッフに、女性性器切除が行われている理由を尋ねました。自分の身に何が起こったのかを理解したかったのだと語ります。そして現在、ファトゥーさんは自身の経験を多くの人に伝え、他の女の子たちにも声を上げるように促しています。

ギニアで行われている女性性器切除について、何か伝えたいことはあるかと尋ねられたファトゥーさん。母国語で話すのをやめ、フランス語で語った言葉は、「もう止めて!」 でした。

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