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日本ユニセフ協会
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「日本型子どもにやさしいまち(CFC)モデル
検証作業報告フォーラム」
開催報告

【2020年3月9日  東京発】

日本型子どもにやさしいまち(CFC)モデル検証作業報告フォーラムの様子(2020年11月14日開催)

©日本ユニセフ協会/2019

日本型子どもにやさしいまち(CFC)モデル検証作業報告フォーラムの様子(2020年11月14日開催)

公益財団法人日本ユニセフ協会は、2019年11月14日(木)、「日本型子どもにやさしいまち(CFC)モデル検証作業報告フォーラム」をユニセフハウス(東京)にて開催いたしました。

はじめに

日本ユニセフ協会は、2018年10月29日に、5つの自治体(ニセコ町、安平町、富谷市、町田市、奈良市)の町長、市長の方々にユニセフ「日本型子どもにやさしいまちづくり事業」の検証作業の委嘱状を交付させていただきました。この検証作業は2年間の期間で実施されており、本フォーラムでは、作業開始から約1年が経過するのに伴い、5自治体の皆様に検証作業の途中経過と、ユニセフの提唱する「子どもにやさしいまち日本型モデル」が、当該自治体の子ども施策にどのくらい有益なのか等について、担当部署の責任者の方々にご報告いただきました。

また、本フォーラムの開催に合わせて、ユニセフ本部よりAndrea Rossi(ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所リージョナル・アドバイザー)が来日し、子どもにやさしいまちづくり事業の世界での実施状況、特にドイツ・ケルン市で10月15日~18日に開催されたCFCサミットについて、報告をしました。

第1部: 基調講演

 「すべての子どもに 子どもにやさしいまちを」

Andrea Rossi(ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所リージョナル・アドバイザー)

Andrea Rossi氏(ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所リージョナル・アドバイザー)

©日本ユニセフ協会/2019

Andrea Rossi氏(ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所リージョナル・アドバイザー)

今年は子どもの権利条約が採択されてから30周年になります。そして、1996年に開始した「子どもにやさしいまちづくり事業」は、市町村等での自治体をベースに子どもの権利条約の内容を具現化する事業として、今では40カ国以上の3,300もの自治体で展開されるようになりました。

「子どもにやさしいまち」(CFC)とは、子どもたちの声・ニーズ・優先性が、子どもたちの暮らしや将来に影響を与える公的な政策・計画・決定の重要な部分に反映される自治体のことを示します。

ではなぜ、子どもにやさしいまちづくり事業がこのように広がってきたのでしょうか。

それは、子どもへのより良い事業の在り方が家族を魅了することで、家族が自治体内に居住し続けることを促進したり、SDGsの目標を推進することに寄与したり、自治体のイメージアップにつながったりするからです。

10月中旬にドイツのケルン市で開催されたCFCサミットには、世界の250を超える自治体から、市長、町長、専門担当官、子どもや若者など、682人が参加しました。また、CFCに取り組む開発途上国と先進国との双方を含む45カ国から、市長・町長100人近くが参加し、地方自治体の先駆的な取り組みを通じて子どもの権利を推進するためにはどのようにするのが良いか、などが討議されました。

日本でのCFCの取り組みが、子どもを含めた誰もが安心・安全に暮らせる、持続的な生活の実現に大きく貢献することを、本日のフォーラムの参加を通じて拝見するのは、とても喜ばしいことだと感じます。

第2部 自治体からの報告/パネルディスカッション

第2部では「日本型子どもにやさしいまちづくり事業」の検証作業について、木下勇氏(日本ユニセフ協会CFCI委員会委員長/千葉大学大学院教授)の司会のもと、5自治体の担当部署より進捗状況が報告されました。

 

SDGsとCFCI「子どもが住み続けられるニセコ町」

桜井 幸則 氏(ニセコ町保健福祉課課長)

©日本ユニセフ協会/2019

桜井 幸則 氏(ニセコ町保健福祉課課長)

ニセコ町は昔から「相互扶助」の精神が根付いており、これを基本にまちづくりを行っています。また、ニセコ町は国からSDGs未来モデル事業自治体に指定されており、環境と社会と経済の相乗効果を基本にまちづくりを行っております。これにより、安心して住み続けられる地域コミュニティの形成すなわち、住民自治のまちづくりが推進されております。無論、課題もあります。

ニセコ町に生まれ育った子どもたちが、どうすれば町外に流れていかにようになるのか、また、SDGsを中心とした持続可能なまちづくりに、子どもの視点が反映されているのか検証する必要性を感じています。構成要素の10番目の項目を設定するに当たり、整理をしました。ニセコ町は農業と観光のまちであり、その基盤は豊かな自然環境にあります。

こうしたことを背景に、日本型子どもにやさしいまちモデル構成要素10番目の「当該自治体にとって特有の項目」として、「SDGsニセコ町 子どもが住み続けられるまちづくり~環境と経済と社会について、子ども向けの施策は反映されているか~」を設けました。庁舎内での取り組みに関しては、今年7月に、町長を委員長にし、「ニセコ町子どもにやさしいまちづくり委員会」を設置し、職員研修も行い、次年度の予算編成方針に於いて「子どもにやさしいまちづくり」の検証と具体的行動を進めるよう明記されました。

 

 

遊びを通じた震災からの復興

永桶 憲義 氏(安平町教育委員会教育次長)

©日本ユニセフ協会/2019

永桶 憲義 氏(安平町教育委員会教育次長)

2018年9月6日に、北海道胆振東部地震の発生により大きな被害を被った安平町では、震災からの復旧・復興の取り組みの一環としてもCFCIを行っています。

日本型子どもにやさしいまちモデルの基本構成要素の10番目は「遊びを通じた震災からの復興」としました。

この項目の1つ目の事業として次の事業を行っています。地震のためにほとんどの公園が被災し、現在も使えていないところがあります。安平町は子どもたちの遊び場、遊ぶ機会、遊びそのものを提供し、心理的ケアの側面を含めた事業を本年度から行っています。名付けて「遊育推進事業」を子どもたちの意見も生かして行っています。地元に身近に棲む生き物を通した地元探検学習の遊育推進事業や地元環境を活用した親子のふれあいの機会を提供する事業も行っています。

2つ目として、この項目のもとに上げているのは「学校の再建」です。地震により早来中学校の校舎が使えなくなり、早期の学校の再建が子どもたちからの要望として寄せられています。地震の影響による計画外の建設ですが、早期に行うことを決定しました。但し、元の校舎のような建物を作るのではなくも、学校の再建を復興のシンボルとして、子どもたちの声も聴き実施しています。そして町のHP上でこうした取り組みの情報発信も行っています。

 

市庁舎内で分野横断的に取り組むCFCI

猪股 純子 氏(富谷市とみや子育て支援センター所長)

©日本ユニセフ協会/2019

猪股 純子 氏(富谷市とみや子育て支援センター所長)

富谷市では、2018年5月に「富谷市子どもにやさしいまちづくり推進庁内連携会議」を発足させ、CFCIを総合的、長期的に協議、検討を図ることを目的に分野横断的に取り組む会議を現在に至るまで5回開催しております。その会議の中では、子ども関連の事業や子どもの参画を進めるには、子どもに分かりやすい説明や工夫が必要となり、ひいては、市民の誰にでも分かりやすく行政に対する理解、信頼の構築につながると共に、子どもが参画することで地域自治の担い手を築き、行政と市民の協働の自治に繋がるなどの意見が出されました。

2018年11月20日(世界子どもの日)には、CFCI検証作業自治体に選定されたことを市民に周知させる「富谷市子どもにやさしいまちづくり」の推進を宣言するフォーラムを開催致しました。

2019年5月11日には富谷市スポーツ少年結団式が開催され、市内のスポーツ参加団体23団体が、ユニセフが推進する「子どもの権利とスポーツ原則」の趣旨に賛同する署名をしました。

10月の連携会議では、日本型CFCモデル構成要素や評価方法に関して、評価の文言の共通理解や誰もが分かりやすい表現が必要である等の意見が出されました。11月20日に、子どもの声を直接聴く「わくわく子ども会議」を開催し、連携会議において、基本構成要素の10項目を決定し、富谷市特有の課題を明確にすることになっています。

 

日本型子どもにやさしいまちモデルの基本構成要素を検証する

鈴木 敬之 氏(町田市児童青少年課課長)

©日本ユニセフ協会/2019

鈴木 敬之 氏(町田市児童青少年課課長)

ユニセフ「日本型子どもにやさしいまちモデル」は基本構成要素10項目及びそれに付随するチェックリスト、そして、事業の進捗に関してはルーブリック評価を使って評価を行うというのが骨子であると理解しています。

町田市では、この基本的な要素に関して、CFCIを全庁的に拡げる前に、担当部である子ども生活部内で内容を吟味してみる事になり、子ども生活部内の6課にこの事業の基本構成要素等に関して、疑問点や分かりづらい点等がないかどうかを評価してもらいました。その結果、表現的な問題や用語の統一性に問題があるなどの意見が出されました。こうした点を修正する必要があると思います。

しかし、チェックリストそのものは評価しやすく、ルーブリック評価についても、定量評価が難しい活動などに関し、公正で効率的な評価ができるとの肯定的な反応でした。今後の検証作業としては、表現を分かりやすく、改善、補足説明を加えるなどの工夫をすることをすることで、イメージをしやすい構成要素に仕上げることができると思います。

次に、町田市のCFCIの具体的な取り組みの紹介ですが、子どもの参画を促進する「子どもとともに市政を考える町田創造プロジェクト」、市の事業に対する市民参加型の評価、高校生も参加する「高校生の町田市事業評価参加」、そして10月にケルンで開催されたCFCサミットへの市長・中高生の参加は、大きな取り組みでした。

 

奈良市子どもにやさしいまちづくり条例を生かすCFCIの取り組み

玉置 卓 氏(奈良市子ども政策課課長)

©日本ユニセフ協会/2019

玉置 卓 氏(奈良市子ども政策課課長)

奈良市では、「奈良市子どもにやさしいまちづくり条例」を平成27年4月に施行しております。この条例は奈良市の子どもたちが今を幸せに生きることができ、将来に夢と希望をもって成長していけるようにし、子ども参加によって大人とともにまちづくりを進めることを目的とし、多くの時間をかけてつくり上げたものです。

市、保護者、地域住民、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者及び事業者が連携・協働し、子どもにやさしいまちを促進するものです。この条例に定めている子どもにやさしいまちづくりの具体的な取り組みとしては、子どもの意見表明や参加の促進、子ども会議の開催、子どもの居場所や遊び場をつくること、子どもの相談窓口を充実させることなどがあり、子どもたちの意見が単なるセレモニーで終わらないように、市長を本部長とする奈良市子ども・子育て支援推進本部を設置し、全庁的に子ども・子育て支援に取り組んでいます。

現段階の実質的な作業としては、本事業の担当課である、子ども政策課内で、基本構成要素やチェックリストの検証、課題の洗い出しを行い、市の各事業に紐づけをしようとしている所です。このプロセスを経てから、全庁的な取り組みとして広げていきたいと考えているところです。

 

パネルディスカッション(木下教授から追加質問)

©日本ユニセフ協会/2019

日本型子どもにやさしいまち(CFC)モデル検証作業報告フォーラム、パネルディスカッションの様子(2020年11月14日開催)

各自治体からの「日本型子どもにやさしいまちモデル」検証作業の進捗に関する報告の後に木下教授よりそれぞれの報告者に以下の質問が出され、それに対する回答がなされました。

玉置氏(奈良市)には、子どもの参画に関し、奈良市はCFCIの実施において、「子どもやさしいまちづくり条例」をどのように活用されているのでしょうかとの質問がなされ、玉置氏より、「この条例は子どもにやさしいまちづくりを具現化するための条例です。具体的には、子どもの参画を保障するために子ども会議を開催することを定めており、その会議で出された子どもたちの意見が市長に提出されています。こうした子どもたちの意見を市全体で受け止めています。」との回答を受けました。

鈴木氏(町田市)には、高校生に町田市の事業評価を行ってもらっていますが、CFCの構成要素・チェックリストについても評価してもらうのはどうでしょうかとの質問がなされ、鈴木氏より、「高校生の事業評価に関しては、町田市と評価者の意見交換の場となっており、評価人の高校生から「要改善」の判断が下されますと、即改善の流れになります。高校生の評価や感想は聞いてみたいですが、チェックリストは町田市だけで使用するものではありませんので、事業評価にかけるのは現段階では難しいです。」と説明されました。

猪股氏(富谷市)には、国の仕組みを見ると分野横断的な取り組みは難しい現状のようですが、富谷市ではCFCIをどのように分野横断的な取り組みにされているのですかとの質問がなされ、猪股氏より、「子どもにやさしいというのは、誰にでもやさしい」というアプローチで庁舎内での理解を求めており、庁内連携会議の位置付けが重要であるとともに、8月の職員向けの研修会実施は有意義でした。また、市長が先頭に立って分野横断的な取り組みの推進であることを表明していることは心強いです。」との答えを得ました。

永桶氏(安平町)には、災害からの復旧、復興に向けての子どもの参画というのは、どのよう背景があったのかとの質問がなされ、永桶氏より、「地震が起きて、学校を再建しなくてはいけない、あるいは、遊び場が無くなったというのは子どもたちへの影響が最も大きく、町民から学校の再建に関し意見を求めた時に、子どもたちが積極的に反応し、意見を多く言ってくれました。子どもたちの意見を活かすことがCFCIにとって重要だと考えたのが背景にあります。」との答えを得ました。

桜井氏(ニセコ町)には、ニセコ町は国からのSDGsモデル事業として指定を受けていますが、子どもたちがもっと関われるSDGsにするというのはどうでしょうかとの質問がなされ、桜井氏、「ニセコ町では相互扶助の考え方がSDGsとイコールだと捉えています。そうした観点から、まちづくりの中に子どもの視点も含まれるという考えでCFCIも推進しています。特にSDGs未来都市モデル事業では、子どもから高齢者まですべての世代を含めた地域づくりを目標としています。」との答えを得ました。

最後に

ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所リージョナル・アドバイザーのRossi氏は、5自治体からの報告及びその後の質疑を聞き、次のようなコメントをしました。

「5自治体のCFCIの実践は多様であり、深みがあったように思います。そうした実施に際し、少し気が付いた所を述べますと、例えば、奈良市の実践では、条例という正式な形で市がコミットするのは重要なことだと思います。

CFCIに熱心に取り組む自治体を持つ国は、単に意見やマーケティングとして出されるのではなく、自治体として正式にコミットすることが大切になります。CFCIは市長や町長などの個人あるいは自治体の特定の部署に関するものではなく、行政全体に紐づくものだからです。

歴史的にさかのぼると、ユニセフが最初に関わった企画は、1992年の「Mayor Champion for Children」呼ばれ、市長、町長などが牽引役として機能するというものでした。その後、市長、町長だけではなく行政全体が関わるものとしてCFCIの現在の形になってきています。

CFCIの重要な所は行政内で分野横断的に取り組む所です。子どもと作業をするので、子どもたちは我々大人に、部署の垣根を超え一緒に作業させるようにするのです。従って、調整が大切になります。この調整を通して、子ども担当課だけではなく他の課との関連が大切になってくるのです。

次に、お話を聞いていて気になった点に関して触れさせて頂きます。

子どもが自治体の行事に参画したがらないとのご報告もありましたが、それは、子どもが内容に関心が無いのではなく、大人が使う文言や手法に興味がないのではないかと思います。子どもにわかりやすく親しみやすい言語や手法をとることで子どもたちにも参加をしてもらえると思います。

そして、子どもやさしいまちと認識されるためにはコミットメントも大事ですが、その結果何が起きたのかについて把握をする責任も発生します。例えば、ユニセフがある自治体を「子どもにやさしいまち」と認識した時に、その自治体の住民の方々もそれについて認識をしているでしょうか、そして、子どもたちもそれについて認識をしているでしょうか。そこが達成された時に子どもにとっても素晴らしいし、行政にとっても素晴らしい結果がもたらされると思います。」

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