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日本ユニセフ協会

報告会レポート

子どもにやさしいまちシンポジウム開催報告
みんなでつくる「こどもまんなか社会」
~ドイツと日本の取り組み~

2025年6月20日東京

ユニセフは、子どもと最も身近な行政単位である市町村等で、子どもの権利条約を具現化する活動として「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」を推進しています。1992年に始まり、現在世界で約40か国、3,000以上の自治体で取り組まれています。2021年に本事業を正式開始した日本では、最初に「日本型CFCI実践自治体」として承認された5つの自治体(北海道ニセコ町、北海道安平町、宮城県富谷市、東京都町田市、奈良県奈良市)が第一期(3年間)の取り組みとその評価を経て、第二期の実践を始めています。また、今年1月には、新たに愛知県豊田市が実践自治体として承認され、埼玉県三芳町も昨年、同候補自治体として参加しました。

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025

そのような中、日本ユニセフ協会は5月2日、真の「こどもまんなか」社会の実現についてみなさまと考える機会として、日本より約10年早くCFCIを開始したドイツからゲストスピーカーを招き、こども環境学会との共催でシンポジウム「みんなでつくる子どもまんなか社会~ドイツと日本の取り組み~」を開催しました。

プログラム

開会挨拶 日本ユニセフ協会 会長 高須幸雄
基調講演 ハイデローゼ・ブルックナー 博士
日本の自治体の取り組み 日本ユニセフ協会CFCI委員 木下 勇 委員長

北海道ニセコ町 片山 健也 町長
北海道安平町  及川秀一郎 町長
奈良県奈良市  仲川げん 市長
宮城県富谷市  若生裕俊 市長
東京都町田市  石阪丈一 市長
愛知県豊田市  辻󠄀邦惠 副市長

パネル
ディスカッション
モデレーター:木下勇 委員長

登壇者:
・ハルトムート・ヴェーデキント 博士
ハイデローゼ・ブルックナー 博士
・宮城県富谷市  若生裕俊 市長
・東京都町田市  石阪丈一 市長
・愛知県豊田市  辻󠄀邦惠 副市長

 

開会挨拶:「SDGsの達成にもつながる地域の取り組み」
日本ユニセフ協会 会長  高須 幸雄

Ⓒ日本ユニセフ協会
日本ユニセフ協会 会長 高須幸雄

子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)は、市区町村レベルで子どもの権利を具体化する取り組みです。

貧困の削減、質の高い教育、差別・いじめ・虐待・暴力の撲滅など、SDGs指標の多くが子どもに関連します。誰も取り残されない社会の実現には、国全体や平均で見るのでは十分でなく、地域ごとに優先課題を選定し、自治体が市民組織や企業と連携して改善に向けて取り組むことが重要です。「子どもの最善の利益」に立脚したCFCIのようなローカルな取り組みは、地域特有の課題だけでなく、グローバルな課題の解決にもつながります。

日本では、こども大綱に基づき、自治体は「こども計画」の策定に努め、子どもの権利に関する施策の策定・啓発が求められています。子どもの最善の利益、子どもの意見の尊重などの基本原則が住民すべてに理解され、実践されれば、環境は大きく改善されるはずです。

子どもの幸福・ウェルビーイングを高めるだけではなく、まちのすべての人にとって住みやすいまちづくりにつながるCFCIの輪が、多くの自治体に広がることを祈念しています。

基調講演:「子どもの権利を社会の中に構造的な形で定着させること」
ハイデローゼ・ブルックナー 博士

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025
ハイデローゼ・ブルックナー博士

ドイツは1992年に子どもの権利条約を批准しました。そして2012年、私が「ドイツ子ども支援協会(Deutsches Kinderhilfswerk e.V.)」の専務理事を務めていた時に、ユニセフ協会とともに「子どもにやさしい自治体協会(Kinderfreundliche Kommune e.V.)」を設立し、CFCIを開始しました。スタート時は、規模の異なる6つの自治体によるパイロット事業として始まりましたが、現在では郡を含む62の自治体が参加しています。

CFCIに参加するには、まず各自治体の議会で参加に関する議決を得ることが大前提です。そのうえで、「子どもにやさしい自治体協会」による承認を経て、行政職員や子どもたちを対象としたアンケート調査が行われます。その結果をもとに、自治体は専門家の協力のもと、子どもや若者の意見を反映させた行動計画を策定します。認証取得までには通常1~2年かかり、これらのプロセスを段階的に進めていきます。

ドイツにおけるCFCIでは、「子どもの最善の利益の尊重」「子どもにやさしい環境づくり」「子ども・若者の参加」「情報提供とモニタリング」の4つを柱に取り組みを進めています。協会では全てのプログラムのステップにおいて品質管理マニュアルを整備しており、専門家がプロセス全体を通して自治体と伴走しながら支援を行っています。

行動計画の実施期間は通常3年間で、この間には子どもや若者との中間ディスカッションが行われます。終了が近づくと、プログラムの延長について検討するワークショップも実施されます。

多くの自治体では、青少年議会や子ども諮問委員会などを通じて、子どもたち自身が課題解決に向けたプログラムを立ち上げ、主体的に活動しています。自治体によっては、子ども・若者が市長と直接協議をしたり、子ども・若者のための設けられている予算の配分を子ども・若者自身が決定したりする例もあります。また、参加自治体の半数以上では、子どもの利益を代弁し、子どもの立場から活動する「子ども・青少年担当官」が配置されています。

さらに、多くの自治体では保育園や小学校を対象に、教材やゲームを使って子どもの権利を学べる「子どもの権利キット」を提供しています。こうした教材を活用したワークショップの開催には、ドイツ連邦青少年省による資金助成も使われています。

子どもの権利条約第12条に定められている「子どもの意見の尊重」を実践するために、全国の自治体で数多くのプロジェクトが進められています。中には、「子どもが計画に関わらない限り、公園を設置してはならない」と議会で決議した自治体もあるほどです。

私たちのプログラムが継続的に実施されているのは、構造的な支援体制を重視しているからです。民主的なプロセスは非常に重要ですし、実際に自治体の行政業務に変化が生まれたとの報告もあります。多くの自治体は、最終的に永久認証を取得するまで、約10年ほどこの取り組みに関わり続けています。さまざまなプロジェクトを通じて、子どもの権利を社会の中に構造的な形で定着させることが何よりも重要だと考えています。

日本のCFCIの取り組み

今回、北海道ニセコ町の片山町長、同安平町の及川秀一郎町長、奈良市の仲川市長はオンラインで、宮城県富谷市の若生裕俊市長、東京都町田市の石阪丈一市長、愛知県豊田市の辻󠄀邦惠副市長は会場で参加となりました。基調講演の後、日本ユニセフ協会CFCI委員会の木下勇委員長(こども環境学会会長)からの概要説明に続き、それぞれの自治体から取り組みが紹介されました。

「市民団体との協働による『こどもまんなか社会』の実現」
日本ユニセフ協会CFCI委員会 木下 勇 委員長

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025
日本ユニセフ協会CFCI委員会 木下勇 委員長

日本では、準備期間を経て2021年にCFCIを正式に開始しました。ドイツをはじめ多くの国がとっている認証方式に対し、日本では「自己評価型」を基本とするアプローチを採用しています。外から評価を受けるのではなく、チェックリストを使ったアセスメントとPDCAサイクルによって自ら評価し、学び、改善を重ねていくしくみです。そのプロセスに子どもの声をきくことも重要です。CFCI委員会はそのプロセスをサポートしながら、委員会の第三者評価として確認し、承認(recognition)を行います。

ドイツでは、補完性の原理が法に規定され、NPOと行政の協働の原理にもなっています。補完性の原理とは、小さいものができることを大きなものが邪魔をせず、できないことは大きなものが補い支えるという考え方です。地方分権の考え方でもあり、おとなと子どもの関係にも通じます。

また、青少年育成の連邦法には、多様な主体によって進めなければならないと記され、行政が民間を支援することが明確にされています。日本でも、子どもにやさしいまちを展開するにはNPOや市民団体とどのように連携するのかを考えることが必要です。

これから、6つの実践自治体の市長/町長からそれぞれの取り組みをご紹介いただき、幼児教育および教授法の専門家ハルトムート・ヴェーデキント博士より、子どもが意見表明をするために、教育現場で大切なことは何かについてもお話いただきます。

北海道ニセコ町 片山 健也 町長

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ニセコ町 片山健也 町長

ニセコ町は、観光と環境の両立を目指し、持続可能なまちづくりを進めてきました。2000年に制定した「ニセコ町まちづくり基本条例」に基づき、自治体施策を進めています。キーワードは、情報共有と住民参加です。条例の第11条には子どものまちづくり参加について明記しており、それぞれの年齢にふさわしい方法でまちづくりに参加する権利があることを謳っています。

実際に子どもまちづくり委員会では、子どもたちがまちの総合計画策定の際の話い合いへ参加したり、フィールドワーク等で学びながらまちへの提言を行ったりしています。子ども議会で出される意見は、交通安全から観光、環境政策など多岐にわたります。実際に子どもの意見に基づき予算編成が行われることもあります。

ニセコ町は2018年の検証作業の最初からCFCIに参加しました。2021年には教育委員会にこども未来課を新設し、子どもの人権から子育て支援まで、子ども政策を一貫して進めています。

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現在、町内には約46か国からの海外国籍の住民が住んでおり、海外国籍の子どもも増えているため、町内に2つのインターナルスクールを誘致するなど、教育の多様性の幅も広げています。

これからも、子どもの人権を守り、子どもがまちづくりに参加する持続可能なまちづくりを進めていきたいと思います。

北海道安平町 及川秀一郎 町長

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安平町 及川秀一郎 町長

安平町は日本有数の馬産地であり、観光客も多く訪れる町です。2018年の北海道胆振東部地震発生後、しばらく人口が減少しましたが、2022年頃から転入が増え、3年連続社会人口増となっています。

震災後、被害を受けた中学校の再建を、同じ地区の3つの小学校とあわせ義務教育学校として進めましたが、再建の検討の際には、子どもたちも会議に加わってもらいました。

再建後も、「ルールメイキングプロジェクト」によって、小学生と中学生の混合の児童生徒の有志が議論を進め、学校現場に意見を出して校則改訂を進めました。おとな、子ども、学年など関係なく、対話によって解決の糸口を見出す取り組みは、子どもの意見表明権の実践の場として、今後もいろいろな場面で継続していきたいと考えています。

学校以外の場所でも子どもの声を聞くことを大切にしています。子どもからの意見を基に、こども園と駐車場・公共施設の間に走っていた町道を廃止することが決まった例もあります。

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今後は特に3点について力を入れていきたいと思います。まずCRE(Child Rights Education)導入により、ルールメイキングプロジェクトのような取り組みを中心に、子どもの権利が推進される学校を目指します。また、子ども教育環境条例制定を、子どもの意見を聞き、子どもとおとなの対話を大切にしながら進めていきます。さらに、子どもから意見を聞きやすくするしくみとして、オンラインプラットフォームを設立します。教育委員会の事業だけでなく、総合計画の策定やまちづくり基本条例の改正などにも、活用していきたいと思います。

奈良県奈良市 仲川 げん 市長

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奈良市 仲川げん 市長

奈良市は、2015年に施行した「奈良市子どもにやさしいまちづくり条例」に基づき、子ども参加を大切にし、子ども中心のさまざまな施策展開を行っています。例えば、家庭で居場所がなく、悩みや課題を抱えた子どもたちへ、オンラインを使った支援を行っているほか、公設のフリースクールの運営や、子どもたちの海外経験を後押しするような補助金事業、経済的な格差が、体験や学びの格差につながらないための、食事支援や就学支援なども行っています。

また、中核市として4番目に児童相談所を設置しました。子どもセンターとして遊び場や子育て広場などと一体的に整備し、緊急的な介入にとどまらず、遊びの中から課題を見つけて適切な相談窓口につなげています。また、全国的に専門家の常駐を行う児童相談所は限られるなか、子どもセンターには小児科医や子どもの権利に知見のある弁護士が常駐しており、一時保護されている子どもたちが第三者の弁護士を通して意見を表明する機会を設けるなど、子どもの権利を守りながら、子どもたち自身が主体的に環境改善していけるような取り組みを行っています。

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いじめ問題は全国的に深刻ですが、中学生自身がルールをつくり、いじめ防止啓発の担い手になるプログラムも実施しています。また、自由に声をあげる場として子ども会議を開催し、行政施策への改善提案を行う機会も設けています。ファシリテーターの支援を受けながら、子どもたちはまちづくりの当事者として取り組んでいます。

どこに住んでいても、子どもの育つ環境に格差が生じないことが国全体で求められると思います。そのためにも、全国1,700の自治体すべてがともにCFCIに取り組んでいくことを期待しています。

宮城県富谷市 若生 裕俊 市長

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富谷市 若生裕俊 市長

富谷市は、2018年に「子どもにやさしいまちづくり宣言」を行い、子どもの権利条約をまちづくりの基盤とした政策を展開してきました。全部署が子どものことを考え推進するために、副市長を会長とする全部長参加の推進庁内連携会議と、筆頭課長を中心とした推進に関する会議の二層構造の体制をとっています。妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を行う「子育て支援センター”とみここ”」が、CFCIの事務局を担っています。

CFCIでは毎年、チェックリストを基に自己評価を行い、実践行動計画を作成するとともに、子ども向けの評価結果も公表し、子どもたちにも取り組みを伝えています。富谷市総合計画の中でも子どもにやさしいまちづくりを位置付け、こども計画もこどもにやさしいまちプランとして策定しています。

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子どもから提案してもらう機会も積極的に設けています。とみやわくわく子どもミーティングでは、高校生がファシリテーターとして参加し、小学生がテーマに沿ってグループワークを行い、まとめた意見は市長に直接提言する機会をつくっています。中学生は生徒会サミットで、学校ごとに課題を持ち寄り、市の管理職とディスカッションを行い直接提言をしてもらう機会となっています。市内全中学校の全クラスで、子どもの権利条約に基づいた学級憲章づくりを実施して、取り組んでいます。

富谷市は全体予算の46.9%を子ども関連の予算とし、他にも、不登校支援のためのモデル事業への参加、市役所屋上での養蜂体験による環境教育、防災教育、スポーツ少年団での子どもの権利に関する意識啓発など、多様な事業を行っています。

東京都町田市 石阪 丈一 市長

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町田市 石阪丈一 市長

町田市は、「子どもが自ら選び、過ごせる居場所づくり」の実現に向けた多面的な取り組みをおこなっています。屋内の施設としては子や子どもクラブといった児童館を、子どもが歩いて通える距離に配置し、「子ども委員会」による子ども主体の運営を徹底しています。特に子どもセンターは、中高生からの「部活の後に使用できるようにしてほっしい」という、声を受けて夜9時まで開館するようにしました。また、屋外の居場所押して子どもが自由に遊べる冒険遊び場も市民団体の運営によって整備されています。これらの事業によって、子どもが地域の中でおとなの見守りの中で、安心して過ごせるまちづくりにつながっています。

さらに、子ども・若者のやりたいことを、市が企画の支援や補助金の交付などで後押しをする「まちだ若者大作戦」を2年前から行っています。市の広報誌を子どもが担ったり、子ども主導運営のフェスティバルの開催など、おとなは“手伝うだけ”の関係性をつくることで、子どもたちの主体性と責任感を育んでいます。

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2025年5月5日に「子どもにやさしいまち条例」施行1周年を迎え、CFCIの第一期の評価を経て、第二期に入りました。第一期の3年間は、一貫して、おとなが子どもに何ができるかを考えてほしいと伝え、子どもにやさしいまちの実現に向けた基盤を築いてきましたが、第二期は、これまでに策定した条例や計画に基づき、多様な地域の主体が子どもを中心としたまちづくりに参加していただけるよう働きかけていきたいと思います。

 

愛知県豊田市 辻󠄀 邦惠 副市長

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豊田市 辻󠄀 邦惠 副市長

豊田市は、今年の1月に、全国6番目のCFCI実践自治体として承認されました。豊田市は、子どもを含む市民公募の委員とともに約2年間議論を重ね2007年に「子ども条例」を制定しました。これが、豊田市が子どもにやさしいまちづくりを推進するスタートラインでした。2010年からは豊田市子ども総合計画を策定し、今年度から第4次計画(豊田市こども・若者計画)が始まりました。

子ども会議は2008年から設置しており、小学校5年生から高校生までが参加し、調査や体験を通して考え、意見交換をしながら提言を行っています。また子どもの権利相談室に子どもの権利擁護委員を置き、弁護士や臨床心理士などの専門家が子どもの代弁者となって、子どもの権利侵害に対して専門的な知見から権利の回復を支援しています。

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さらに子どもの権利を啓発するために、子どもの権利学習プログラムを開発し、幼児から中学2年生対象の教材を作成しています。2023年からは市内の小中学校全103校で子どもの権利学習プログラムを必修とし、教職員や地域向けにも研修をおこなっています。

CFCIチェックリストによる自己評価を基に、各施策への子どもの意見反映や市民団体と連携した居場所づくりについては、今後特に力を入れて進めたいと思っています。

パネルディスカッション

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025

続いて行われたパネルディスカッションは、会場参加の、ハイデローゼ・ブルックナー博士、富谷市の若生市長、町田市の石阪市長、豊田市の辻󠄀副市長の登壇によって進められました。

子どもにやさしいまちづくりを進めるにあたり、どのように市民団体と連携していくのか、社会全体で何を大切にするのかが議論されたほか、ブルックナー博士とともに来日した教育および教授法の専門家であるハルトムート・ヴェーデキント博士も加わり、多くの自治体で実践されている教育現場での取り組みに関連して、子どもにやさしい学校としての学びの場で大切なことについて、話を聞きました。

 

ハルトムート・ヴェーデキント博士

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025
ハルムート・ヴェーデキント博士

ドイツにはいろいろな学びの場がありますが、その一つが学びのワークショップというものです。子どもにやさしい学校としての学びの場です。

100年前にエブリンとジョン・デューイという研究者が書いた本によると、子どもが必要とするものは4つ。一つは他の人とコミュニケーションをとること。それから、創造性を発揮できること。そして、未知のことを調べたり、新しいことを試してみたりすること。何かを構築すること。これらが充足されれば、学校は子どもにやさしい学校となるというのです。

私がかかわっている学校では、子どもたちが自分で決めて学び、学んだことについて他の子どもたちとコミュニケーションをすることがテーマになっています。また、子ども同士の連携、持続可能な学び、さらに、子どもたちが特別な学習体験をすることを大切にしています。それによって、子どもたちは、学ぶことがおもしろいんだ、楽しいんだということを体験するのです。それから子どもたちに、社会的な出会い、そして感情的な出会いの機会を提供することも大切です。

今日ご紹介いただいたすべての自治体で、すべてのケースで、学校が活動の中心となり、学校が子どもたちの参画の中心地になっていることは、非常にうれしいことです。子どもは、15年ぐらいは学校で過ごすわけですから、学校を中心として子どもの参画が行われているということは素晴らしいことだと思いますし、私からも御礼を申し上げます。

 

ハイデローゼ・ブルックナー博士

Ⓒ日本ユニセフ協会

地域との連携についてお話をすると、ドイツのCFCIでは、社会全体のいろいろな組織が参画できるように考えています。保育園、学校、青少年グループ、文化関係の団体、消防団など様々な団体の方に、私たちのプログラムの調整グループに入っていただくことが前提になっています。計画段階から、さまざまな立場の方が調整しながら子どものための事業を進めていくのです。

今回日本に来る前から、日本の自治体の取り組みについてうかがえるのを楽しみしてきました。実際にお話をうかがい、私たちは同じような道、そして同じような目標に向かって歩いていることを感じました。

当然ですが、いろいろなシステムがあっていいと思います。日本型であれ、ドイツ型であれ、あるいはまた違う国のシステムがあると思います。重要なことは、私たちが子どもの権利条約を真摯にしっかりと受け止めて、それに対して真摯に取り組んでいくことです。具体的には、子どもの言うことをしっかりと聞いて、子どもの権利が何なのかということをしっかりと認識していくこと。これを子どもが小さな時から私たちは意識してやっていかなければならないと思います。

ぜひみなさんもドイツにいらしてください。またいつか別の機会に意見交換ができることを楽しみにしています。

 

富谷市 若生 裕俊 市長

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市民団体との協働についての特徴的な活動を2つご紹介します。富谷市は、東北で初めて不登校特例校を開設しています。不登校の子どもをもつ保護者の語り合いの会が、市内の団体によって開催されています。特徴的なのは、その団体のジュニア部の小中学生が、自らの不登校の経験を語ることで、課題解決のための啓発を行っていることです。

また、フードバンクの活動をおこなう団体によって、子ども食堂の開設やプレーパークの運営が行われています。

富谷市は2018年に「子どもにやさしいまちづくり宣言」をおこなって、7年間行政が力を入れて、子どもにやさしいまちづくりを進めてきましたが、まだ地域や市民への広がりが十分でないことを感じています。今後は条例づくりを進め、市民の方とともに、さらに踏み込んで子どもにやさしいまちづくりを進めていきたいと思っています。

 

町田市 石阪 丈一 市長

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025

市民団体に自主的にやっていただくことは大原則と考えています。例えば、町田市にも冒険遊び場はたくさんありますが、市民団体によってどんどん開設されています。質の高い活動を行っていただくには人材や資金が必要ですので、その部分は町田市として予算を確保するようにしています。

町田市が行った調査で、地域で困ったことがあったときに、自分たちで解決するか、行政に依頼するかという質問項目がありました。20年前は、60%が自分たちで解決すると回答しましたが、今年の調査では逆転し、行政にお願いするという回答が60%となりました。

企業の方、市民の方、みなさんに、子どもたちに対して何ができるか考えてほしいと伝えていますが、難しい時代に入ってきていることを感じています。工夫しながら進めたいと思います。

 

豊田市 辻󠄀 邦惠 副市長

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025

2023年に全国的な市民フォーラムである「子どもの権利条約フォーラム」を豊田市で開催したのですが、その時に子どもに関わる団体のみなさんで実行委員会を組織いただき、2日間のプログラムを実施することができました。翌年は、豊田市独自で同様のフォーラムを開催し、今年も実施する予定です。

これまでは権利のことについて、行政が一生懸命「わかってください」と訴えるだけでしたが、フォーラムの実施によって少しずつ、団体同士の横のつながりや行政とのかかわりができつつあり、さまざまな立場の方から子どもの権利について考えようという動きが出てきています。いろんな考の方たちが、それぞれの強みを発揮しながら、同じものに向かって進むというのは力になると思います。

今日はいろいろなお話をうかがうことができ、まだまだできることはあると思いました。これからもよろしくお願いいたします。

 

CFCI委員会 木下 勇 委員長

Ⓒ日本ユニセフ協会/2025

ドイツ語でBildung(ビルドゥング)は教育という意味ですが、建物を建てるという英語のBuilding(ビルディング)と語源は同じだそうです。人が生活して家を建てることと、子どもを育てることは同じということです。本当は行政任せではなく、自らが行っていくこと。

子どもたちの声を聴きながら進めていく、子どもにやさしいまちづくりによって、自ら考える子どもが育っていくことで、社会も変わっていくのではないかと思います。本日はありがとうございました。

 

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

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