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日本ユニセフ協会

プレスリリース

食料危機に関するグローバル報告書
急性食料不安が6年連続で増加
「飢きん」に直面している人は過去最多

2025年5月16日ジュネーブ/ニューヨーク/ローマ/ワシントン D.C

ユニセフ(国連児童基金)をはじめとする国連機関などは、本日発表された「食料危機に関するグローバル報告書(GRFC)」に関し、共同で以下の声明を出しました。報告書によると、急性食料不安と子どもの栄養不良が6年連続で増加し、2024年には、世界で最も脆弱な地域の一部で何百万人もの人々が危機的状況に陥っています。

北ダルフール州にあるユニセフ支援の保健センターで、上腕計測メジャーを使った栄養状態の検査を受け、赤色=重度の急性栄養不良と示された子ども(スーダン、2025年5月4日撮影)

© UNICEF/UNI789992/Jamal
北ダルフール州にあるユニセフ支援の保健センターで、上腕計測メジャーを使った栄養状態の検査を受け、赤色=重度の急性栄養不良と示された子ども(スーダン、2025年5月4日撮影)

「飢きん」に直面している人は過去最多

本報告書によると、紛争、経済ショック、異常気象、強制的な避難が、世界中で食料不安と栄養不良を引き起こしており、すでに脆弱である多くの地域に壊滅的な影響を及ぼしています。

2024年には、53の国と地域で2億9,500万人以上が深刻な飢餓に陥っており、前年から1,370万人増えました。特に懸念されるのは、急性食料不安の悪化で、現在、分析対象人口の22.6%が急性食料不安に直面しています。この数字は5年連続で20%を超えています。

総合的食料安全保障レベル分類(IPC)における飢餓の最も深刻なフェーズである「飢きん」(IPC/CHフェーズ5)に直面している人の数は前年から2倍以上に増加して190万人に達し、本報告書が2016年に追跡を開始して以来、最多となりました。

とりわけ子どもの栄養不良は、パレスチナ自治区ガザ地区、マリ、スーダン、イエメンを含め、極めて高い水準に達しました。栄養危機が確認された26の国・地域で、計3,800万人近くの5歳未満の子どもが急性栄養不良に陥りました。

本報告書はまた、強制的な避難による飢餓が急増していることも明らかにしています。国内避難民、庇護希望者、難民など、世界全体で1億2,800万人いる避難を余儀なくされた人々のうち、9,500万人近くがコンゴ民主共和国、コロンビア、スーダン、シリアといった食料危機に直面している国々に暮らしています。

急性食料不安と栄養不良の主な要因

ユニセフが支援するガザの病院で、重度の栄養不良の治療を受けている子ども(パレスチナ、2025年5月12日撮影)

©UNICEF VIDEO/UNI793912
ユニセフが支援するガザの病院で、重度の栄養不良の治療を受けている子ども(パレスチナ、2025年5月12日撮影)

  • 紛争は依然として急性食料不安の最大の要因であり、20 の国と地域で約 1 億 4,000 万人に影響を及ぼしています。スーダンで飢きんが確認されたほか、ガザ地区、南スーダン、ハイチ、マリなど、壊滅的なレベルの急性食料不安に見舞われている国や地域があります。
  • 物価高騰や通貨価値の下落などの経済ショックにより、15 カ国で 5,940 万人が飢餓に見舞われています。飢餓は、2023 年以降は小幅に減少したものの、新型コロナウイルス感染症流行以前の 2 倍近い水準にあります。最大かつ最も長期化した食料危機のいくつかは、アフガニスタン、南スーダン、シリア、イエメンなどで、主に経済ショックにより起きました。
  • 異常気象、特にエルニーニョ現象による干ばつと洪水は、18 カ国を食料危機に追い込み9,600 万人以上に影響を与え、特に南部アフリカ、南アジア、「アフリカの角」とよばれるアフリカ東部地域が大きな被害を受けました。

本報告書は、飢餓のショックは2025年も続く可能性が高いと見ています。食料・栄養危機に対する人道支援資金が、報告書が初めて発表されて以来、最も大幅に削減されると、本報告書を発表した「食料危機に対するグローバルネットワーク」が予測しているためです。

食料危機の連鎖を断ち切るために

ダマールで、ユニセフ支援の移動診療所から、栄養治療食を受け取った4歳のムハンマドちゃん(イエメン、2025年2月12日撮影)

© UNICEF/UNI736173/Haleem
ダマールで、ユニセフ支援の移動診療所から、栄養治療食を受け取った4歳のムハンマドちゃん(イエメン、2025年2月12日撮影)

急性食料不安と栄養不良は記録的なレベルにまで増加していますが、それに対処するための国際社会からの資金提供はここ数年で最も急速に減少しており、政治的な機運も弱まっています。

飢餓と栄養不良が増え続ける連鎖を断ち切るには、エビデンスに基づいた効果重視の行動を優先するという、大胆な転換が必要です。これは、リソースを集約し、効果的な取り組みを増やし、被災したコミュニティのニーズと声をすべての対応の中心に据えることを意味します。

「食料危機に対するグローバルネットワーク」は、緊急の支援にとどまらず、長期的な脆弱性に対処しショックに対する回復力を構築するために、特に世帯の 70%が生計を農業に依存しているような危機が起こりやすい農村地域で、地元の食料システムと総合的な栄養サービスに資金を投入するよう提言しています。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルはこう述べています。「豊かな世界にあって、子どもが飢えることや、栄養不良で命を落とすことはどんな理由があっても許されません。空腹は子どもの胃袋をむしばみます。飢えは、子どもたちの尊厳、安心感、そして未来をもむしばみます。世界中の飢えている子どもたちを養うだけの十分な食料があるのに、どうして私たちは傍観し続けることができるのでしょうか。目の前で起きていることを見過ごすことができるのでしょうか。重要な栄養サービスへの資金が削減され、何百万人もの子どもの命が危機に瀕しているのです」

2025年版「食料危機に関するグローバル報告書(GRFC)」はこちら

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