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ストーリー

パレスチナ・ガザ地区
重度の栄養不良に苦しんでいたオダイちゃん
ユニセフの栄養支援により命をつなぐ

2025年8月8日パレスチナ

栄養治療を受けて回復し、叔父に抱っこされて笑顔を見せるオデイちゃん(パレスチナ、2025年7月24日撮影)

© UNICEF/UNI871959/SoP
栄養治療を受けて回復し、おじに抱っこされて笑顔を見せるオダイちゃん(パレスチナ、2025年7月24日撮影)

 

パレスチナ・ガザ地区で生まれた、生後10カ月のオダイちゃん。不安定な情勢下で生を受けたオダイちゃんは、爆撃によって家族全員を失いました。

「オダイはとても弱々しく、目がくぼんでいました」と、オダイちゃんのおじは7月中旬の様子を振り返ります。「よく眠れないようで、日を追うごとに体調が悪化していきました」。

ガザ地区で2年も続く戦闘の中で、オダイちゃんのように孤児となった子どもは、推定数万人にのぼります。そして今、ガザ地区の子どもたちは深刻な飢きんに直面しています。農地や市場の壊滅、清潔な水の不足、人道支援物資の搬入制限により、ガザ地区の210万人が食料安全保障の危機にさらされています。

ユニセフとパートナーは、ガザ地区において、急性栄養不良がかつてない速さで増加していると報告しています。人口の約4分の1にあたる約50万人が飢餓に近い状態にあり、親は自らの食事を削っても、子どもたちを飢えから守ることができない状況です。

爆撃で家族を失い、飢きんに苦しむ

重度の急性栄養不良の治療を受ける前のオデイちゃん。痩せ細り、ほとんど反応できない状態だった(パレスチナ、2025年7月14日撮影)

© UNICEF/UNI871960/SoP
重度の急性栄養不良の治療を受ける前のオダイちゃん。やせ細り、ほとんど反応を見せない状態だった(パレスチナ、2025年7月14日撮影)

ガザ市では、5歳未満子どもの栄養不良率がわずか2カ月で4倍に急増し、16.5パーセントに達しています。

おじとおばに育てられていたオダイちゃんも、十分な食べ物を手に入れることができず、家族が身を寄せる仮設避難所で衰弱していたところを、コミュニティのリーダーに発見されました。

ガザ地区の大部分は依然として避難命令下にあり、家屋の大半は損傷を受けていたり、住むことができない状況にあります。オダイちゃんには出生証明書も身分証明書もありませんでした。家族を失った爆撃で、すべてなくなってしまったのです。

コミュニティのリーダーは、オダイちゃんのおじたちに対して、避難先の学校に設置された移動診療所で診察を受けるように促しました。

移動診療所の医療スタッフから、栄養状態の診察を受けるオデイちゃん(パレスチナ、2025年7月14日撮影)

© UNICEF/UNI871940/SoP
移動診療所の医療スタッフから、栄養状態の診察を受けるオダイちゃん(パレスチナ、2025年7月14日撮影)

移動診療所で上腕周囲径を測定して栄養不良の検査を行った結果、オダイちゃんの腕周りは9.3センチメートルしかありませんでした。オダイちゃんは重度の急性栄養不良と脱水状態に陥っており、深刻な消耗状態にあると診断されました。

幸いにも集中的な栄養治療・ケアを受けられるセンターが近くにあり、オダイちゃんはそこに10日間入院することができました。その間、経過を注意深く見守られながら、治療を受けました。急性栄養不良の場合、通常の食事だけでは十分に回復することが難しく、治療計画に沿った高カロリーの栄養治療食の摂取が不可欠な場合が多いのです。

「移動診療所の方々がオダイにしてくださったことを、私は決して忘れません。ずっと『ひとりじゃない』と感じることができました。いつも誰かがそばにいて、私たちを励ましながら、治療やケアの一歩一歩を導いてくださいました」とオダイちゃんのおじは言います。

 

希望の象徴:ユニセフの支援で守られた命

ガザ地区でユニセフによる栄養治療および支援サービスを10日間受けた結果、ふっくらとした体つきになり、発達も改善したオデイちゃん(パレスチナ、2025年7月24日撮影)

© UNICEF/UNI871939/SoP
ガザ地区でユニセフによる栄養治療および支援サービスを10日間受けた結果、ふっくらとした体つきになり、発達も改善したオダイちゃん(パレスチナ、2025年7月24日撮影)

わずか10日で、オダイちゃんは再び笑顔を見せるようになりました。上腕周囲径は11.2センチメートルまで回復し、やせ細っていた体にも丸みが戻りました。さらに、ハイハイを始め、音にも反応するようになりました。

「オダイちゃんは希望の象徴です。避難と喪失の真っただ中で、幼い子どもが再び笑顔を取り戻しました。これは早期支援の力です」と、ユニセフ・パレスチナ事務所の保健・栄養チーフのメラニー・ガルヴィンは言います。「オダイちゃんを見ても分かるように、人であふれる避難所でも、極度のプレッシャーの下でも、適切なタイミングで支援を行うことができれば、子どもたちの命を守ることができるのです」。

オダイちゃんの事例は、急性栄養不良の早期検査と治療・ケアが命を守るために不可欠であることを示しています。こうした支援を大規模に実現するためには、ガザ地区において停戦が維持され、人々が人道支援や食料にアクセスできるようになり、現地の食料システムが再構築されることが必要です。

困難な状況のなかでも、ユニセフはガザ地区の子どもたちとその家族の命を守るため、栄養支援を続けています。

栄養治療食を口にするオデイちゃんと叔父。家族を亡くしたオデイちゃんの親代わりになっている(パレスチナ、2025年7月24日撮影)

© UNICEF/UNI871942/SoP
栄養治療食を口にするオダイちゃん。抱っこしているおじは、家族を亡くしたオダイちゃんの親代わりになっている(パレスチナ、2025年7月24日撮影)

 

※本記事は2025年8月に発表され、当時のガザ地区の状況を伝えています。

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