2021年9月13日東京発
ユニセフ(国連児童基金)は、9月7日から10日にかけてニューヨークで開催されたユニセフ執行理事会の第2回定例会合に提出した報告書において、日本の旅行・観光業界およびICT関連事業者による子どもの性的搾取防止に向けた取り組みを、「子どもの権利の擁護と推進」に関する好事例として紹介しました。
「子どもの権利に関するユニセフの普遍的アジェンダの枠組みにおける、高所得国および上位中所得国から高所得国へ移行する国々におけるユニセフの取り組みに関する進捗報告」と題する報告書で、ユニセフは、主に、ユニセフと協力協定を結んだユニセフ協会(国内委員会)がユニセフと連携して展開するアドボカシー活動の成果を報告。パラグラフ23(d)で、民間セクターが子どもの権利保護に積極的に貢献している具体例として、日本におけるこれらの業界横断的な取り組みが言及されています。
業界主導で広がった子どもの保護の取り組み
■旅行・観光業界:国際的枠組みに基づく「行動倫理規範」
日本の旅行・観光業界では、2005年に「子どもの性的搾取防止のための旅行・観光業界行動倫理規範(The Code―コードプロジェクト)」への参加が本格的に開始されました。旅行・観光を通じた子どもの商業的性的搾取を防止するための国際的イニシアティブであるコードプロジェクトでは、企業による方針策定、従業員教育、取引先との契約条項、旅行者への情報提供など、具体的な6つの行動が求められました。
日本では、旅行会社、航空会社、ホテル等が連携。最大で関連事業者の約9割が参加しました。このような業界全体での取り組みは、子どもの権利保護を事業活動の中に組み込む実践として、国際的にも注目されました。
※コードプロジェクト運営体制の変更にともない、ユニセフと日本ユニセフ協会の関与は、2012年で終了しています。
■ICT関連事業者:オンライン環境における子どもの保護
ICT関連事業者による取り組みも、日本における重要な実践事例として評価されています。2000年代初頭、“爆発的”とも言われたインターネットの普及とともに、オンライン上での子どもの被害リスクが高まる中、日本の主要インターネットサービス関連事業者は、違法・有害情報対策のための自主的な取り組みを検討。日本ユニセフ協会などの呼びかけなどにも答え、2011年、子どもの性的虐待コンテンツ(児童ポルノ)が掲載されたサイトへの削除要請と掲載サイトへの接続被害を抑制する「ブロッキング」と呼ばれる取り組みを始めました。
先駆的な実践
ユニセフ、国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンは2012年に「子どもの権利とビジネス原則」を策定し、企業活動における子どもの権利尊重と推進の枠組みを提示しています。しかし、日本の旅行・観光業界とICT関連事業者の取り組みは、同原則はおろか、2011年の「ビジネスと人権に関する指導原則」の採択以前、または、ほぼ同時期に実践されていた点が特徴です。
「子どもの権利とビジネス原則」は、企業に対し、子どもの権利を侵害しない「尊重(respect)」にとどまらず、積極的に権利の実現に貢献する「推進(support)」を求めています。 日本の両業界の取り組みは、①サプライチェーンやサービス提供過程におけるリスクの低減、②利用者や社会への意識啓発、③業界横断での基準づくりと普及といった点において、まさにこの「尊重」と「推進」の両面を具体化したものと言えるでしょう。
ユニセフが、今回、本報告書において日本の両業界の事例を取り上げたことは、企業が主体的に子どもの権利課題に取り組むことの重要性と、その実効性を示すものです。特に、業界全体での高い参加率と実施範囲を伴う取り組みは、他国や他分野にとっても参考となるモデルとなります。今後、「子どもの権利とビジネス原則」のさらなる普及・実践に向けて、こうした先駆的事例の知見を活かしていくことが期待されます。




























