2026年1月22日東京発
日本ユニセフ協会は、2025年12月22日(月)、ユニセフハウスにて開催中の写真展『ファトマ・ハッスーナ写真展』にあわせ、世界的に活躍するジャズピアニスト小曽根真さんによる特別なコンサート『小曽根真コンサート for ファトマとガザの子どもたち』を開催。当日は音楽を通じて、遠くガザで生きたひとりの女性の想いを受け止め、平和を願うかけがえのない時間となりました。
ファトマさんの物語が生んだ特別な企画

© Fatma Hassona
破壊された建物のなかに立つファトマさん
コンサートタイトルにある「ファトマ」とは、映画『手に魂を込め、歩いてみれば』に登場するガザ出身の女性フォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナさんのこと。
当時23歳だったファトマさんは、途切れがちなインターネット回線をつなぎながら、ガザの外にいる監督とビデオ通話を重ね、人々の暮らしを伝え続けました。しかし、映画がカンヌ国際映画祭に正式出品されることを知った翌日、彼女の命は空爆によって奪われます。
このコンサートは、映画を通じて彼女のメッセージに深く共感した小曽根さんが「ファトマさんのことを少しでも多くの皆さんに知ってほしい。そのために僕にできることがあれば」との想いから実現しました。
会場に響いた「ともに考える」メッセージ

© 日本ユニセフ協会/2025
ユニセフ・パレスチナ事務所特別代表からもメッセージが寄せられました
生前のファトマさんが魂を込めて撮影したガザの人々や子どもたちの写真がロビーに展示されるなか、ユニセフ・マンスリーサポーターの皆さまを中心に多くの方々が集い、会場は熱気に包まれました。
冒頭、日本ユニセフ協会事務局長 郡玲治が挨拶に立ち、ガザ人道危機 緊急募金へのご協力に感謝を伝え、「小曽根さんの魂のこもった音楽を全身で感じながら、ファトマさん、そしてガザの人々に思いを馳せ、私たちにできることは何かを一緒に考える、今日のコンサートがそんな時間になればと思います」と話しました。
続いて、ユニセフ・パレスチナ事務所 特別代表ジョナサン・ヴェイチからのメッセージ動画が上映され、現地で子どもたちに届く支援の様子が紹介されました。
「約束を果たす一日」

© 日本ユニセフ協会/2025
「今日をきっかけにガザとつながってほしい」と語ったユナイテッドピープル関根代表
これまで多くのガザ関連作を配給してきたユナイテッドピープルの関根さんも登壇。学生時代にガザを訪れた際、「日本に帰ったら、ガザ地区のことを伝えてほしい」と頼まれたことが、現在の事業を始めたきっかけだと語り、次のように話しました。「今日はその約束を果たす、何日目かのうちの一日です」。
そして予告編とともに映画『手に魂を込め、歩いてみれば』を紹介し、「映画、写真、今日のコンサートをきっかけに、ぜひガザとつながってほしい」と呼びかけました。
知ることで、変わる

© 日本ユニセフ協会/2025
「大切なのは知ること」と語る小曽根真さん
いよいよ、小曽根真さんがステージへ。司会者とのトークでは、2026年1月にリリースされるアルバム『For Someone』について、「ガザやウクライナなど、紛争の絶えない今の世界に自分の心が影響されて作曲したもの。意図したものではなくあふれでてきた音。作りながら、自分の心が現在の世界の状況に傷つけられていることに気づいた」と語り、今回のコンサートの演奏曲目の背景を明かしました。
また、分断が進む社会について話が及ぶと、ジャズとクラシックの境界を行き来する自身の音楽活動を振り返りながら、「無知であることが恐怖を生む。だから大切なのは知ること」との想いを語り、「はじめはクラシックが嫌いだった。クラシックを知らなかったから。でも、あるきっかけでモーツァルトを初めて弾いてみたら、涙が出た。弾きながらいろんなことが感じられて。音楽家としてお客さんを喜ばせたい気持ちは同じだとわかり、それからはクラシックが大好きになった」と話しました。「実は知ってしまえば、それほど怖いことってないのかもしれない。知ることでリスペクトが生まれ、自分の糧にもなる」とユーモアを交えながら伝えると、会場は深い共感に包まれました。
朗読が呼び起こす、ファトマの声

© Fatma Hassona
ファトマさんが撮影したガザの子ども
トークの時間が終わると、照明が落とされ、会場内に俳優・神野三鈴さんによるファトマさんの手紙の朗読が流れはじめます。
ファトマさんが撮影したガザの人々の写真がスクリーンに映し出されるなか、「今こそ、この戦争を撮って、世界に見てもらわなければ。他に誰がやるの?」という切実な声が響きます。そして最後の――この死の世界に、光を見出そうとしている――という願いのような声の余韻のなか、小曽根さんがピアノの前に座り、その手から、魂を込めた一音がユニセフハウスに広がっていきました。
心を震わせる演奏

© 日本ユニセフ協会/2025
手に魂を込め、演奏する小曽根さん
心の奥から音楽を鳴らし、それをそのまま届けてくれているような演奏でした。音の響きそのものが心を震わせるのです。演奏されたのは、最新アルバム『For Someone』に収録されている小曽根さん自身のオリジナル曲。ファトマさんに捧げた深い陰影が印象的な「Untold Stories」、強烈なリズムのなかで歴史の哀愁が弾ける「Bandoska」、清々しい広がりをもつ「Friends」。音が重なるたびに、観客の表情は深く変わり、涙をぬぐう方も少なくありませんでした。
この日の音楽に通底していた慈しみのような感情。それが私たちのなかで呼び起され、ガザの空の下で生きている人を思い、ファトマさんの眼差しに寄り添う空気が、会場を満たしました。
写真と映画で、さらに深く感じる
計5曲の演奏が終了後、コンサートの余韻に包まれながら、ロビーに展示されたファトマさんの写真を見つめる来場者の姿がありました。彼女が切り取ったガザの日常、そのなかで生きる子どもたちの笑顔と不安。その一枚一枚が、私たちに問いかけます。
映画『手に魂を込め、歩いてみれば』は、ファトマさんが命をかけて伝えたガザの現実を映し出し、彼女の遺作となった写真作品は、その眼差しが捉えたガザの人々とメッセージをダイレクトに伝えます。
『ファトマ・ハッスーナ写真展』はユニセフハウスで2月19日まで開催中。映画とともにぜひご覧ください。
■「ファトマ・ハッスーナ写真展」

併催「ユニセフ職員が見たガザの子どもたち」ミニパネル展
会期:2025年12月11日(木)~2026年2月19日(木)
会場:ユニセフハウス(東京都港区高輪4-6-12)
開館日時:月曜~金曜、第2・第4土曜 10:00~17:00
※祝日、12/27~1/5は休館
■ 映画『手に魂を込め、歩いてみれば』
廃墟のガザで撮影を続けるフォトジャーナリストと、彼女を見守るイラン人監督との1年にわたるビデオ通話で紡がれた比類なきドキュメンタリー。空爆や飢餓、不安にさらされながらも、街の光景や人々の力強さを写真に収め続けたファトマ・ファッスーナ。監督が「彼女は太陽のような存在」と称賛したファトマはしかし、カンヌ映画祭での上映が決まった直後の2025年4月16日、家族とともに空爆で命を奪われます。残された彼女の映像と言葉は、今も「声をあげることの意味」を私たちに問いかけています。12月5日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー。

登場人物:セピデ・ファルシ、ファトマ・ハッスーナ
監督:セピデ・ファルシ
プロデューサー:ジャヴァド・ジャヴァエリー
製作:Reves d‘Eau Productions、24images Production
配給:ユナイテッドピープル
2025年/フランス・パレスチナ・イラン/113分



























