メニューをスキップ
日本ユニセフ協会
HOME > ニュースバックナンバー2021年 >

COVID-19ワクチンを
西部・中部アフリカ地域に届けるために ユニセフの取り組み

【2021年1月18日  西部・中部アフリカ発】

マンで定期予防接種を受けるジブリルくん。(コートジボワール、2020年4月撮影)

© UNICEF/UNI322522/Frank Dejongh

マンで定期予防接種を受けるジブリルくん。(コートジボワール、2020年4月撮影)

コートジボワール西部で、生後2カ月のジブリルちゃんは、大切な目的のために、お母さんに連れられて病院にやって来ました。それは、予防接種です。

2020年4月、国内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行している中でも、母親はジブリルちゃんを連れてくることを強く望んでいました。「子どもが他の感染症にかかってほしくないの。それに、病院では出生登録もするのよ」

はしか、ポリオ、ジフテリアなど、ワクチンで予防可能な感染症から命を守るために、西部・中部アフリカ地域の24カ国で毎年定期的に予防接種を受けている子どもたちは2,500万人。今回ジブリルちゃんも、そのうちのひとりになりました。予防接種を受けていないと、子どもたちやコミュニティ全体が感染症のリスクに晒され、長期にわたって健康や命を脅かされてしまうのです。

ワクチンの輸送

世界最大のワクチン供給者として、ユニセフ(国連児童基金)は、定期予防接種やエボラ出血熱のような感染症流行への対応のため、ワクチンの調達や輸送を長年担ってきました。その経験を生かしユニセフは、汎米保健機構(PAHO)と協力して、世界の低・中所得国92カ国(うち4分の1は西部・中部アフリカ地域の国々)にCOVID-19ワクチンとして承認を受けたワクチンを調達し、供給するための取り組みを主導しています。

しかし、これらのワクチンを製造元から各国に届けることは、大変な作業です。ワクチンを空輸するために十分な航空機のスペースを確保する必要があるだけでなく、出荷から人々に投与されるまでワクチンを一貫して低温で適切に保管しなければなりません。そのため、承認ワクチンが各国に輸送される前の段階で、「コールドチェーン(低温物流システム)」設備を整備することが必要不可欠で、ユニセフは各国政府にそのための技術的支援も提供しています。

太陽光発電を利用したワクチン貯蔵庫

保健センターにユニセフが設置したソーラーパネル。発電した電力をソーラー式冷蔵庫に使用している。(マリ、2019年3月撮影)

© UNICEF/UN0293913/Keïta

保健センターにユニセフが設置したソーラーパネル。発電した電力をソーラー式冷蔵庫に使用している。(マリ、2019年3月撮影)

「西部・中部アフリカ地域は最も複雑な環境に置かれた地域の一つです」と、この地域におけるユニセフの物資供給責任者であるジャン・セドリック・ミューズは述べました。「COVID-19ワクチンを、大都市だけでなく遠隔地の村々にも届ける、という課題に取り組んでいます。あらゆるシナリオに備えているのです」

2018年以降、ユニセフは各国政府と協力し、GAVIアライアンスの支援を得て、西部・中部アフリカ地域の全域にわたってワクチンを保管できるよう、太陽光発電の冷蔵庫の購入と設置を開始しました。この取り組みは、電気の供給がなく保冷設備が整っていない地域や地区で、子どもへの定期予防接種を実施するために努力をしている地元の保健・医療従事者にとって、大きな助けとなるでしょう。

「私たちは必要な設備が不足している場所を特定し、海岸から内陸部の森林に至るまで、約2万台の太陽光発電の冷蔵庫を設置することに着手しました。このような設備を備えることは各国にとって大きな財産になります。今後も導入を続けていきます」(ミューズ)

この冷蔵庫は、2~8℃の温度での保管を必要とするワクチンに適しています。COVID-19ワクチンとして有望視されている複数の候補ワクチンはこの温度範囲での保存を条件としていることから、2021年を通して、各国におけるCOVID-19ワクチン供給に欠かせない設備となるでしょう。世界の子どもたちの11%が暮らす西部・中部アフリカ地域における定期予防接種のために、ユニセフが各国の保健省に対し継続的に行ってきた支援の一つがこの冷蔵庫の配置です。

パンデミックで得られた教訓

ヌアクショット国際空港にB型肝炎、はしか、風疹などのワクチンが届いた様子。(モーリタニア、2020年6月撮影)

© UNICEF/UNI337812/Pouget

ヌアクショット国際空港にB型肝炎、はしか、風疹などのワクチンが届いた様子。(モーリタニア、2020年6月撮影)

出荷から人々に接種されるまで、ワクチンの低温状態を保つ設備を整えることは、COVID-19ワクチンの輸送において達成しなければならない大きな課題の一つです。そしてもう一つは、世界中にワクチンを空輸するうえで、十分な航空機のスペースを確保することです。ユニセフはこれまでに航空業界とともに輸送計画を進めてきましたが、COVID-19の感染拡大初期における大規模なワクチン輸送の取り組みを生かすこともできます。

COVID-19が及ぼす影響が明らかになり始めた2020年当初、ユニセフ西部・中部アフリカ地域事務所は、各国政府やパートナーとともに、定期予防接種に必要なワクチンの在庫調査を始めました。懸念されていたのは、各国が渡航制限を導入し、航空会社が飛行機を飛ばさなくなれば、地域全体ではしかやポリオなどのワクチンが不足し、何百万人もの子どもたちがそれらの感染症のリスクに晒されてしまうということでした。

「ユニセフは、世界全体における予防接種、ロジスティックス(物資輸送・供給)、コールドチェーンにおいて、最も多くの経験と専門知識を持っている組織の一つです。各国やパートナーとの長年の協力関係は、パンデミック時にもワクチンの需要を予測し、輸送を実行に移すための経験として生かすことができます」(ミューズ)

この取り組みは成功を収めました。数週間のうちに、2機の貨物機が13カ国に向けて飛行し、ジフテリア、破傷風、はしか、ポリオ、B型肝炎を含む1,100万回分以上のワクチンを輸送したことで、各国の定期予防接種用のワクチン在庫が十分に確保されたのです。

「この成功事例は、COVID-19ワクチンにおける輸送の課題をも克服できることを示しています。明日どうなるか分からなくても、地域全体の予防接種専門家のネットワークを結集し、パートナーとアイディアを出し合い、航空会社との調整を行い、必要なワクチンを必要とする国に確実に届けることができたのですから」(ミューズ)

世界中の人々にワクチンを届けるために

2021年にCOVID-19ワクチンを世界中に届けることは、ユニセフにとって大きな挑戦ではありますが、それを実現するための準備は着々と進んでいます。

ワクチンを各国に届けることができるように、10億本以上の注射器と医療安全ボックスの購入・備蓄をすでに開始しています。航空・海上輸送能力における課題を特定し、世界中にワクチンを輸送するための貨物スペースを確保できるよう取り組んでいます。

ユニセフは、COVID-19ワクチンを世界各国に公平かつ迅速に分配していくことを目指す世界的枠組み「COVAXファシリティ」を通じて、ワクチンを受け取る予定の低・中所得国92カ国において、政府によるコールドチェーン設備への投資を支援し、最も取り残された地域の人々にワクチンを届けるために24時間体制で活動しています。

【関連動画】

シェアする


トップページへ先頭に戻る