メニューをスキップ

ストーリー

ルワンダ
デジタル補聴器が開いた新しい“音の世界” 支援が女の子にもたらした声、自信、そして未来

2026年1月16日ルワンダ

© UNICEF/UNI853740/Iyakaremye
弟と一緒に、自宅で水を汲むファトゥマさん。デジタル補聴器を受け取る前は、孤独を感じることがよくありましたが、今では、他の子どもたちと同じように、自信を持って家族を支えている(ルワンダ、2025年8月26日撮影)

ルワンダ東部の小さな村で暮らすファトゥマさん(16歳)は、4歳のころから“音のない世界”で生きてきました。家族の声も、教室のにぎやかな音も届かず、孤独の中で過ごす日々。それでも、とある支援プログラムとの出会いが、彼女の人生を大きく変えていきます。初めてデジタル補聴器をつけた瞬間に広がった新しい“音のある世界”——そこから、彼女の学び、日常、そして未来への夢は驚くほど動き始めました。そんなファトゥマさんの物語をご紹介します。

4歳のときから静寂の中で生きてきた

© UNICEF/UNI853726/Iyakaremye
自宅の前で、両親と一緒に誇らしげに立つファトゥマさん。長年の苦労と努力を経て、両親は「デジタル補聴器は、娘に声と自信、そして未来を取り戻してくれた“奇跡”だった」と語る(ルワンダ、2025年8月26日撮影)

ファトゥマさん(16歳)は、ルワンダ東部、ルワマガナ郡のムガヌラ村で、両親と2人のきょうだいと一緒に暮らしています。彼女は4歳のときから、静寂の中で生きてきました。聴覚と発話に困難を抱え、学校の授業についていくことも、同年代の子どもたちと遊ぶことも、家族と意思疎通することもできませんでした。「デジタル補聴器を使う前の生活は、本当に大変でした」と彼女は振り返ります。「みんなと一緒にいても、いつもひとりぼっちのように感じていました」。

ファトゥマさんの両親は、その苦しい日々をよく覚えています。できる限り娘を支えようと、アナログ式の補聴器を購入しましたが、ほとんど役には立たず、ファトゥマさんがその補聴器を学校で失くしてしまってからは、再度購入する経済的余裕もありませんでした。「どうしようもできない深刻な状況でした」と父親は語ります。「娘はもう他の子どもたちのように生きるチャンスを持てないのでは、と考えてしまいました」。

母親は静かに続けます。「娘を見つめることしかできず、呼びかけられても返事すらできない姿を見るたびに泣いていました。家で静かに座っている娘を見るのは、とてもつらいものでした。初めて私に声をかけてくれたときには、泣いてしまいました。でも、それは喜びの涙でした」。

人生が一変した瞬間

© UNICEF/UNI853723/Iyakaremye
補聴器を装着するファトゥマさん。ウィンシガ・ンドゥムヴァ・プログラムを通じて提供されたこの補聴器は、彼女に人と触れ合い、学び、自立するという新しい世界をもたらした(ルワンダ、2025年8月26日撮影)

その喜びは、ファトゥマさんが『ウィンシガ・ンドゥムヴァ(Winsiga Ndumva-ルワンダ語で「私を置き去りにしないで、聞こえるから」の意)』プログラムの支援対象に選ばれたときに訪れました。この支援プログラムは、ルワンダ生物医学センター、ユニセフ、「世界的な補助技術へのアクセス格差解消を目的とした官民連携のグローバル・パートナーシップ(ATscale)」の連携により、「HIV/エイズとの闘いと健康増進のための障がい者団体傘下組織(UPHLS)」が実施しており、ルワンダで深刻な課題となっていた聴覚ケアに対する支援不足に取り組むため、2023年に開始されました。当時、補聴器は非常に高価で、保険ではカバーされず、長距離を移動して専門病院まで行かなければ入手できませんでした。そのうえ、偏見や認知不足によって、多くの子どもや家族、地域の人々が診断を受けられないまま、支援も得られずに取り残されていました。

同プログラムは、3年間で120万米ドルを投資することで、障がいのある人を含む誰もが受けられるプライマリ・ヘルスケアを、ニャガタレ、ニャルゲンゲ、フイエ、ニャビフ、ムサンゼ、ルワマガナ、ルシシ、ムハンガの8つの郡へ拡大しました。プログラムの目標は、聴覚ケアを通常の健康診断に組み込み、9,400人以上の子どもに実際に検査を行い、そのうち少なくとも1,200人にデジタル補聴器を提供することです。さらに、医療従事者の研修、教師の支援、地域での啓発活動も進めています。

学校での巡回診察の際、ファトゥマさんはデジタル補聴器を装着してもらい、その瞬間から彼女の人生は一変しました。「初めて補聴器をつけたとき、お母さんの声がはっきり聞こえました。新しい世界に飛び込んだような気がしました」と、その感動をファトゥマさんは話します。

訪れた変化と、新たな夢

© UNICEF/UNI853734/Iyakaremye
村の小さなお店で石けんを購入し、自信を持ってお金のやり取りをするファトゥマさん。以前できなかったこともできるようになり、今では自立し、積極的に地域の活動に参加し、誇りを持って過ごしている(ルワンダ、2025年8月26日撮影)

それ以来、ファトゥマさんの世界は驚くほど広がりました。学校が休みの日は、毎朝デジタル補聴器をつけてから、母親の家事を手伝います。掃き掃除をし、部屋を整え、午後には読書を楽しみます。ときには母親のお使いで、近くのお店まで塩や石けんを買いに行くこともあります。ファトゥマさんは誇らしげに品物の代金を払い、おつりを受け取り、自信を持って自宅に帰ります。「今では、他の女の子たちと同じように自立しています」と父親は語ります。

学校でも、その変化ははっきり見て取れます。デジタル補聴器を手にする前、ファトゥマさんの頼りは手話だけでしたが、手話を理解できる教師やクラスメートはごくわずかでした。そのために、授業を繰り返し受ける必要があり、孤立感を抱え、同年代の子どもたちに比べて学習の遅れを感じていました。今では、授業にしっかりとついていき、発言し、質問に答え、友達とも自由に交流できるようになりました。2025年には、通っていた小学校の全課程を無事終了しました。それは、以前まで不可能だと考えていたことでした。

© UNICEF/UNI853736/Iyakaremye
姉と一緒に、自宅で伝統舞踊の練習をするファトゥマさん(右)。デジタル補聴器のおかげで、スピーカーから流れる音楽のリズムに合わせて踊るなど、以前ならできなかったことも楽しめるようになった(ルワンダ、2025年8月26日撮影)

母親は、娘の変化を日々感じています。「以前なら、ファトゥマが学ぶことはとても大変でした。今では性格も明るくなり、他の人との関わりを怖がらなくなりました。彼女の笑顔を見るたびに、私たちは大きな希望をもらっています」。

ファトゥマさんは、学校だけでなく地域でも自信を持って輝いています。地元の伝統舞踊団に参加し、太鼓のリズムに合わせて踊り、仲間と一緒に体を動かし、喜びにあふれてパフォーマンスしています。「まだ習得中の言葉もあるけれど、以前に比べたら本当に大きく成長しています。彼女が踊る姿を見ると、明るい未来を信じられます」と、父親は誇らしげに語ります。

ファトゥマさんは今、大きな夢を描いています。「将来は医師になりたいです。勉強を続けて、いつか障がいのある他の子どもたちのために声を上げたい。彼らにも“自分も成功できる”と知ってほしいんです」。

パートナーシップが生み出した成果と未来

ファトゥマさんの物語は、強力なパートナーシップがどれほど大きな成果を生み出せるかを教えてくれます。ウィンシガ・ンドゥムヴァ・プログラムは、ファトゥマさんに聞く、学ぶ、成長するという機会を提供するだけでなく、政府、開発パートナー、そして地域社会が力を合わせれば、どんなことでも達成できることを示しています。

最後に、セレマニさんはこう振り返ります。「このプログラムのおかげで、娘は救われました。もしこの支援がもっと多くの子どもたちに届けば、私たち家族が何年も味わってきた苦しみから、多くの家庭が解放されるでしょう。こうした強いパートナーシップは、多くの子どもの生活を大きく改善することができます」。

しかし、やるべきことはまだたくさんあります。ルワンダには、必要な聴覚ケアを受けられず、静寂の中で待ち続けている子どもたちがたくさんいます。次の段階に進むためには、デジタル補聴器へのアクセス拡大、自宅近くで電池交換やメンテナンスを受けられる環境整備、教師の研修、そして人々の認知向上が不可欠です。投資の拡大、アドボカシー(啓発・政策提言)、そして関係団体の協力によって、誰も、聴覚障がいを理由に取り残されることのない未来を実現することができるのです。

© UNICEF/UNI853720/Iyakaremye
以前は教育を受けることは難しいと思っていたファトゥマさんですが、今では、勉強を続け、医師になるという夢を持っています(ルワンダ、2025年8月26日撮影)

© UNICEF/UNI853737/Iyakaremye
母親の手伝いをする前にデジタル補聴器をつけて1日をスタートするファトゥマさん(ルワンダ、2025年8月26日撮影)

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

毎月(定額)のご寄付 今回(一回)のご寄付

※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

関連ページ