2025年5月8日ジュバ発
治安が悪化している南スーダンの上ナイル州で、子どもの栄養治療に必要な物資が著しく不足し、その補給にも支障が出ていることを受け、ユニセフ(国連児童基金)と他の国連機関は、栄養不良の子ども6万人以上の状態が深刻化する恐れがある、と警告しました。
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国内避難民キャンプで、上腕計測メジャーを使った栄養状態の検査を受け、赤色=重度の急性栄養不良と示された3歳の女の子(南スーダン、2025年3月14日撮影)
栄養不良の子どもが命の危機に
上ナイル州へ人道支援物資を届けるための主要ルートである白ナイル川沿いで戦闘が激化していることから、1 カ月近くの間、同地域には人道支援物資がまったく届いていません。
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ユニティ州にあるユニセフ支援の栄養治療センターで、1歳の娘を抱く母親(南スーダン、2025年3月14日撮影)
上ナイル州は南スーダンで栄養不良の割合が最も高い地域の一つです。昨年だけでも、30 万人以上の子どもが中程度または重度の栄養不良に陥りました。雨季が本格化するなか、紛争によって家族が避難を余儀なくされる状況が続いており、水系感染症のまん延や食料不安が深刻化することで、栄養不良の子どもの数の増加につながると予想されます。
ユニセフと他の国連機関は、直ちに現地に入り支援物資を補給しなければ、中程度および重度の栄養不良の子どもを治療するための栄養に関する物資が、5 月末までに底をつくと予想しています。これにより、州全域のプログラムが停止し、治療ケアを受けている何万人もの子どもに影響すると見込まれます。
4月中旬、1,000トンもの食料と栄養に関する物資を積んだ船が、上ナイル州へ向かう途中で、治安の悪化により引き返すことを余儀なくされました。人道物資の集積・備蓄拠点であるナイル川沿いのボルには、さらに3,000トン近くの物資が待機しており、状況が許せば直ちに輸送される予定です。
治安が不安定な地域に、ユニセフなどの支援物資をあらかじめ配置しておくことはできません。セキュリティ上の懸念に加え、栄養に関する物資は高い価値を持つことから、医療関連施設や倉庫が略奪の危険にさらされるためです。上ナイル州では紛争開始以来すでに、2,000 箱近く(約 26 トン)の命を守る栄養に関する物資が略奪されており、約 1,900 人の子どもが治療ケアと回復につながる唯一の機会を奪われました。
ユニセフ、物資輸送再開を訴え
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ユニティ州にあるユニセフ支援の栄養治療センターで、栄養不良の子どものために治療食を準備するスタッフ(南スーダン、2025年3月14日撮影)
ユニセフ・南スーダン事務所臨時代表のオビア・アチエンは次のように述べています。「戦闘、略奪、河川ルートの混乱が続いていることから、私たちは、物資の供給停止という前例のない苦渋の選択をしました。支援を切実に必要とする子どもに物資が届かないことを懸念したためです。この状況が続けば、2025年5月末までに上ナイル州全域で支援物資が底をつき、もっとも幼く、立場の弱い子どもたちに壊滅的な結果をもたらすおそれがあります」
ユニセフなどは、緊急かつ安全な物資の輸送再開がなければ、上ナイル州全域の子どもが治療ケアの中断による壊滅的な影響に直面し、栄養不良との闘いで苦労して得られた成果が失われ、もっとも幼く、もっとも立場の弱い子どもたちの命がさらなる危険にさらされることになる、と警告しています。