メニューをスキップ
日本ユニセフ協会

プレスリリース

ユニセフ「レポートカード19」
先進国の子どものウェルビーイング
コロナ禍後、急激に悪化

日本36カ国中14位  改善した指標も

2025年5月14日 フィレンツェ/ニューヨーク/東京

 

日本の結果について
詳細はこちら阿部彩教授によるコメントはこちらでご覧いただけます。

日本の「子どもの幸福度」の総合順位は36カ国中14位でした。(前回における総合順位は、38カ国中20位)。

総合順位は、以下の3つの分野を総合した結果です。( )内は前回順位。

精神的幸福度―生活満足度が高い子どもの割合、自殺率:32位(37位)
身体的健康―子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合:1位(1位)
スキル―読解力・数学分野の学力、社会的スキル:12位(27位)

ユニセフ(国連児童基金)のイノチェンティ研究所が本日発表した分析によると、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)が始まって以降、数多くの世界で最も経済的に豊かな国々において、子どもたちの学力、精神的幸福度、身体的健康に著しい低下が見られました。

ブカレストの子育てセンターで、ウクライナから来た3歳のカリムちゃん(右)と一緒に遊ぶ5歳のイリンカちゃん(左)(ルーマニア、2022年10月10日撮影)

© UNICEF/UN0721542/Moldovan
ブカレストの子育てセンターで、ウクライナから来た3歳のカリムちゃん(右)と一緒に遊ぶ5歳のイリンカちゃん(左)(ルーマニア、2022年10月10日撮影)

先進国の子どものウェルビーイングは悪化

ユニセフ・イノチェンティ研究所の報告書「レポートカード19:予測できない世界における子どものウェルビーイング(原題:Child Wellbeing in an Unpredictable World)」は、2018年と2022年の主要データを比較し、新型コロナウイルス感染症や世界規模の社会経済活動の抑制が、経済協力開発機構(OECD)および欧州連合(EU)の加盟43カ国の子どもにどのような影響を与えたかについて見解を示しています。比較可能な5年前のレポートカード以降も、オランダとデンマークは、精神的幸福度、身体的健康、スキルの指標によると、子どもが暮らす場所として最も順位の高い国の上位2位以内の座を維持し、フランスがそれに続きました。

一方で、パンデミック後、多くの国で子どもの学力、特に読解力や数学の基礎的な学力が急激に低下したと報告書は警鐘を鳴らしています。休校が3~12カ月間続いたことで、多くの子どもが遠隔学習を余儀なくされ、学習損失につながりました。報告書によると、子どもたちが本来到達すべき学習習熟レベルからどの程度遅れているかは、平均して7カ月から1年と推定されています。学力低下は、不利な状況に置かれている家庭の子どもたちにとって最も深刻でした。

予防接種を受けに来たハーレスちゃんと母親(コロンビア、2024年3月13日撮影)

© UNICEF/UNI688974/Córdoba
予防接種を受けに来たハーレスちゃんと母親(コロンビア、2024年3月13日撮影)

ユニセフ・イノチェンティ研究所の所長、ボ・ヴィクトル・ ニールンドは、次のように述べています。「パンデミック以前から、子どもたちは多方面で苦境に陥っており、たとえ経済的に豊かな国にあっても、十分な支援を受けていませんでした。今、経済の不確実性が高まる中、各国は子どもの教育、健康、ウェルビーイングを優先し、子どもの生涯にわたる展望と幸福、そして社会の経済的安定を確保する必要があります」

43カ国全体において、推定800万人の15歳の子ども、すなわちこの年齢層の約半数が、読み書きと計算の十分な能力を身につけていない、つまり基本的な文章を理解することができないと評価され、彼らの将来に対する懸念が高まっています。こういった子どもの数は2018年から4%増加し、ブルガリア、コロンビア、コスタリカ、キプロス、メキシコでは、その子どもの割合が最も高く、15歳の子どもの3分の2以上がこのカテゴリーに当てはまります。

日本36カ国中14位  改善した指標も

報告書はまた、メンタルヘルスをめぐる懸念も提起しており、調査対象期間に子どもの生活満足度が落ち込み、データが入手可能な32カ国中14カ国で大幅に低下したことを指摘しています。日本は唯一この分野で顕著な改善が見られました。

ユニセフの支援を受けている、東部イズミルの子どもたち(トルコ、2024年2月8日撮影)

© UNICEF/UNI524827/Karacan
ユニセフの支援を受けている、東部イズミルの子どもたち(トルコ、2024年2月8日撮影)

報告書はさらに、子どもの身体的健康に関するデータを分析し、データがある43カ国中14カ国で、過体重の割合が大幅に増え、長期的に増加傾向が続いていることを指摘しています。

全体として報告書は、高所得国が子どもたちに良い子ども時代と明るい未来のための環境を提供するのは容易ではない可能性があることを示しています。パンデミックによる子どもたちへの影響を指摘し、経済的に豊かな国々における子どものウェルビーイングのせっかくの進歩が、気候変動などの世界的な出来事やショックに対してますます脆弱になりつつあると警鐘を鳴らしています。

報告書は、政府やステークホルダーに対し、子どものウェルビーイングの低下に対処するため、以下のようないくつかの政策分野で行動を起こすよう求めています。

パンデミック後の今、本報告書のデータは、子どものウェルビーイング、とりわけ不利な状況に置かれている子どものウェルビーイングについて、憂慮すべき結果を示しました。「子どもたちが直面している課題の深刻さの度合いは、人生のあらゆる段階で彼らのニーズに対応する、首尾一貫した、総合的かつ子ども時代全体へのアプローチが必要であることを意味しています」(ニールンド所長)

 

注記

「レポートカード19:予測できない世界における子どものウェルビーイング (原題:Child Wellbeing in an Unpredictable World)」は、OECDとEUの加盟国の子どものウェルビーイングを2018年まで分析したレポートカード16を更新したものです。レポートカード19は 、パンデミックが収束に向かう2022年までの状況を反映しています。報告書は、子どものウェルビーイング(幸福度)をめぐる以下の3つの主要な側面に関するデータを提供しています。

関連ページ