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日本ユニセフ協会

人道危機緊急募金情報

スーダン軍事衝突から300日
殺害・性暴力などの残虐行為が急増 子ども400万人が避難

2024年2月9日ジュネーブ

ユニセフ(国連児童基金)広報官のジェームズ・エルダーは、2月9日にジュネーブで行われた国連の定例記者会見において、軍事衝突が続くスーダンの子どもたちの現状について発言をしました。以下は発言の概要です。

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軍事衝突から300日

ジャジーラ州からカッサラ州の避難所にたどり着いた親子。すでに4つの町を移動しており、最終目的地のアトバラを目指している。(スーダン、2024年1月2日撮影)

© UNICEF/UNI499403/Mohamdeen
ジャジーラ州からカッサラ州の避難所にたどり着いた親子。すでに4つの町を移動しており、最終目的地のアトバラを目指している。(スーダン、2024年1月2日撮影)

300日前にあたる2023年4月15日、スーダンの子どもたちに残虐行為の波が押し寄せました。この300日間に起こったことの一部に言及したいと思います。

まず、スーダンで400万人の子どもが避難を余儀なくされました。これほどの避難は世界的にも最大の規模です。1日平均1万3,000人の子どもが避難したことになります。安全が遠のき、人々は普通の生活を送るための財産を失いました。友人や家族と離ればなれになり、あるいは亡くし、希望は消えかけています。

第二に、この300日間の結果として、今年70万人以上の子どもが最も深刻な形態の栄養不良に苦しむ可能性があります。人道的アクセスを改善し、追加の支援を届けることができなければ、そのうち30万人以上は治療を受けられず、数万人は命を落とすでしょう。

第三に、殺害、性暴力、兵士としての徴用が1年前と比べて500%増加しています。つまり、恐ろしいほどの数の子どもが、殺害され、性暴力を受け、徴用されているのです。そして、この数は氷山の一角なのです。

第四に、人口の3分の2が保健医療を十分に受けられなくなっています。つまり、これは保健・健康と栄養のシステムを破壊する戦争であり、それが人々の命を奪っているのです。これは、戦時国際法(国際人道法)の尊重という概念を破壊する戦争であり、それが人々を死に至らしめているのです。これは、家族を養い、守るという家庭に備わる力を破壊する戦争であり、それゆえに人々が亡くなっているのです。

ジャジャーラ州からカッサラ州に避難し、はしかと風しんの予防接種を受ける男の子。(スーダン、2024年1月26日撮影)

© UNICEF/UNI514463/Mohamdeen
ジャジャーラ州からカッサラ州に避難し、はしかと風しんの予防接種を受ける男の子。(スーダン、2024年1月26日撮影)

同時に、これは将来の可能性を破壊する戦争でもあり、国と世代全体の未来を破壊するものなのです。

戦争の真の代償は、単に死傷者数だけで測られることはなく、知的資本の損失も含まれます。この戦争は、スーダンを教育やイノベーション、進歩、希望のない未来に陥れかねないのです。

私が前回ダルフールにいたのは20年前でした。今回の再訪は、悲しいことに、最悪とも言えるものでした。しかし、ダルフールの子どもや、かつてダルフールで子どもだった若者にとっては、現状はさらに辛く、絶望的なのです。

先週ダルフールを訪れた際、栄養不良や暴力が原因で亡くなった人々の話を聞きました。また、夢を失った数え切れないほどの20代の若者たちにも会いました。20年前にダルフールで大虐殺が起きた時、彼らは幼い子どもでした。恐怖の中、家族が必死で彼らを守ったのでしょう。その後の20年間で彼らは成長し人生を立派に歩んでいました。

中央ダルフール州で、水がめに溜めた水を飲む男の子。(スーダン、2024年2月5日撮影)

© UNICEF/UNI518586/Spalton
中央ダルフール州で、水がめに溜めた水を飲む男の子。(スーダン、2024年2月5日撮影)

ダルフールにいる人も、チャドに新しく到着した難民も、私が会った人々は経済学、医学、工学、IT学を修めたか学んでいるところでした。しかし、この戦争の混乱の中で、そうした非常に聡明な学生たちも学業を放棄せざるを得なくなり、彼らの志は打ち砕かれました。

22歳のハイダさんはダルフールでこう言いました。「私には夢がありました。その夢を実現しようとしていました。今は何もありません。夢もありません。悲しみが友だちです」

現在チャドのファルチャナに逃れている20歳のアハメドさんは、「ここで夢を見る余裕はありません」と語りました。

では、どうしたら、この悪夢から抜け出し、再び夢を呼び覚すことができるのでしょうか? 権力を持つ人々は停戦を交渉し、支援が妨げられないようにする必要があります。地方の人々はリーダーシップを発揮する必要があります。支援国の人々は思いやりと人間性を示す必要があります。

ジャジャール州での戦闘激化により、2度避難を余儀なくされた10歳のエブティハルさん(右)と6歳のマブさん(左)姉妹。ワドメダニから逃れる時、勉強を続けるためにユニセフの支援で受け取ったスクールバッグを持ってきたと話す。(スーダン、2023年12月撮影)

© UNICEF/UNI499404/Mohamdeen
ジャジャール州での戦闘激化により、2度避難を余儀なくされた10歳のエブティハルさん(右)と6歳のマブさん(左)姉妹。ワドメダニから逃れる時、勉強を続けるためにユニセフの支援で受け取ったスクールバッグを持ってきたと話す。(スーダン、2023年12月撮影)

しかし、停戦の兆しが見えない今、私たちは2つのことに重点的に取り組まなければなりません。一つ目は、紛争地域のコンタクトラインや国境を越えた、安全で、持続的かつ妨げのない人道的アクセスです。二つ目は、子どもたちが生きていくために不可欠なサービスを維持するのに必要な国際的支援です。現在、私たちにはそのどちらもありません。

2024年、ユニセフは、スーダンで最も脆弱な立場にある760万人の子どもに人道支援を届けるため、8億4,000万米ドルの資金を求めています。支援ニーズの規模の大きさにもかかわらず、昨年、4分の3近くの子どものためにユニセフが求めていた資金提供は実現しませんでした。

多くの子どもたちが見過ごされている中で、家族やコミュニティが何をしているかを思い起こすことが重要です。スーダンの保健医療従事者のほとんどは、戦争が始まって以来、まったく給料をもらっていません。しかし、彼らはスーダンのコミュニティを助けるために業務を続けています。チャドでスーダン難民を受け入れているコミュニティの住民は、食料も水もすでに極度に不足している中でも、できる範囲で難民に分け与えています。人々は持てる力を振り絞り、生き延び、互いを支えようとしています。

その一方で、スーダンの人々は世界から見捨てられたと感じるようになっています。スーダンの子どもや若者たちが置かれている状況に対して、世界は目をそらするのをやめるべきです。この状況が続くことを容認するならば、私たちの人間性はどこにあるというのでしょう?

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