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日本ユニセフ協会

ストーリー

バングラデシュ
気候変動に立ち向かう
友情と学びの力で切り開く未来

2025年5月22日シレット県(バングラデシュ)

「レット・アス・ラーン」プログラム を通じて学ぶことをで勉強を楽しんでいるむタウィダさんとタニアさん(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

©UNICEF/UNI636933/Himu
「レット・アス・ラーン」プログラムで楽しく学ぶタウィダさんとタニアさん(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

タウィダさん(10歳)とタニアさん(12歳)は、親友です。2人は、ユニセフが支援する「レット・アス・ラーン(Let us Learn:私たちに学ぶ機会を)」プログラムが運営している学習センターで出会いました。学習センターは、2人にとって初めての学校でしたが、すぐに基礎的な読み書きと計算を習得しました。

学習センターで楽しく学んでいた2人でしたが、昨年、ある試練が訪れました。

災害に備えるユニセフの取り組み

2人が暮らすバングラデシュ北東部シレット県のシャンティガンジ郡は、窪地の地形で、モンスーンの季節になると、洪水がよく起こります。

その対策として、ユニセフの支援で建設された学習センターは、水害に備えた設計で建てられています。また、教師に対して、防災研修も実施しています。タウィダさんとタニアさんの先生であるフスナ・ベガムさんも、この研修を受けました。「洪水警報が発令されると、学習センターを管理する委員会や地域コミュニティのメンバーに連絡して、教材を安全な場所に移動するのを手伝ってもらいます」と、フスナさんは災害発生時の対応手順を教えてくれました。

洪水の中、水をかき分けながら、飲み水を汲むタウィダさん(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

©UNICEF/UNI636951/Himu
洪水の中、水をかき分けて、汲んだ飲み水を家まで運ぶタウィダさん(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

もともと洪水の多い地域でしたが、特に昨年2024年は、例年を上回る頻度で発生しました。鉄砲水が4度もこの地域を襲ったのです。度重なる増水により学習センターも浸水し、子どもたちが通うことができなくなりました。

タウィダさんは言います。「水が嫌いなの。通学できないし、本も読めないし、友達と遊ぶこともできない。避難所は人でいっぱいだった。タニアに会えなかったときは、本当に悲しかった」。こうした状況のなか、学習センターの周りから水が引くまでに長い時間がかかりそうだと悟った住民たちは、子どもたちが学び続けられるよう、高台にある民家の中庭に、学習センターの代わりとして、臨時の学習スペースを立ち上げました。

奪われてしまった当たり前の生活

しかし、こうした対策が、全ての問題を解決するわけではありませんでした。

「洪水のせいで、臨時の学習スペースへの通学が大変です。子どもたちが笑顔で、この状況に順応できるように、私もなんとか頑張っています」と教師のフスナさんは言います。フスナさんは毎朝、長い時間をかけて臨時の学習スペースへ向かった後、ボートを持っておらず通学ができないタニアさんや他の生徒たちを迎えに行きます。タニアさんは「願いがひとつ叶うなら、学習スペースへ通うためのボートが欲しいです」と言いました。

タウィダさんとタニアさんに教えるフスナさん(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

©UNICEF/UNI636930/Himu
タウィダさんとタニアさんに教える教師のフスナさん(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

 

「代替学習スペース 」でフスナさんの授業講義を熱心に聞く子どもたち(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

© UNICEF/UNI636963/Himu
臨時の学習スペースでフスナさんの授業を熱心に聞く子どもたち(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

 

タウィダさんの髪を縛る母親のスフィアさんは、自身の教育はを諦めたが、て娘の夢を応援している(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

© UNICEF/UNI636953/Himu
タウィダさんの髪を縛る母親のスフィアさん。自身の教育は諦めたが、娘の夢を応援している(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

平時でも学校へ通うのが困難なこの地域で災害が発生すると、子どもたちは教育の機会を奪われてしまいます。この地域の3分の1の家庭は、学校までの距離が遠いため、子どもたちに教育を受けさせることができないのが現状です。さらに深刻なのは経済的な側面で、貧困を理由に半数の家庭が子どもの教育を断念しています。

こうした状況は、子どもたちの心にも影を落としています。タニアさんは、両親が仕事を探しに村を離れたため、他の家族と一緒に暮らしています。両親がいつ帰ってくるかわからず、不安な気持ちを抱えています。また、タウィダさんの父親も、生計を立てるために海外へ出稼ぎをしています。自身は子どもの頃に教育を受けられなかったため、娘には教育を受けさせたいと考えているのです。「お父さんと一緒にいろんな場所に行きたい。お父さんがとっても恋しいの」とタウィダさんは胸の内を明かしました。

教育の力で広がる世界

「レット・アス・ラーン」プログラムを通じて、2019年からスナマンジ県で運営されているこの学習センターは、タウィダさんやタニアさんをはじめ、学校へ通っていなかった3万5,550人の子どもたちの生活を変えてきました。その半数は女の子で、2%以上は障がいとともに生きる子どもたちです。

この学習センターでは、子どもたちは学習レベルに応じてクラス分けをして、自分のペースで勉強することができます。学年や学習の理解度が異なる子どもたちが、同じ空間で共に学び成長しています。

タヴィダさんの母親のスフィアさんは、「家から学校までの距離が遠いので、当初は学校へ通わせることに不安がありました」と振り返ります。「でも、今は、娘をこのプログラムに参加させることができて本当によかったと思っています。学ぶことはもちろん、物語の本も読めるようになりました」。

タウィダさんとタニアさんには、それぞれお気に入りの物語があります。本は、魔法のような、どこまでも広がる想像の世界へと連れていってくれます。また、休憩時間にはクラスメートと一緒に、この地域に昔から伝わる遊びを通して絆を深めます。こうした遊びの要素を用いたアクティビティは、創造性やチームワークを育むことにつながることから、ユニセフが支援する教育プログラムにも組み込まれています。

学習センターのおかげで、タウィダさんとタニアさんは、学んだり遊んだりできる場を得ただけでなく、より良い未来を共に夢見る親友を得ました。

一緒に学習センターへ向かうタウィダさんとタニアさん。タウィダさんは医者に、タニアさんは先生になることが目標(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

© UNICEF/UNI636924/Himu
一緒に学習センターへ向かうタウィダさんとタニアさん。タウィダさんは医師に、タニアさんは教師になることが夢(バングラデシュ、2024年7月4日撮影)

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