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ストーリー

2025年 世界各地で頻発した人道危機
紛争、地震、洪水、台風...
ユニセフが届けた子どもたちへの支援

2025年12月25日発

仮設キャンプに避難している子どもたちに、支援物資のおもちゃを届けるユニセフの教育担当官(ミャンマー、2025年4月26日撮影)

© UNICEF/UNI790128/Htet
仮設キャンプに避難している子どもたちに、支援物資のおもちゃを届けるユニセフの教育担当官(ミャンマー、2025年4月26日撮影)

2025年も、世界各地で子どもたちの命と未来を脅かす危機が続きました。ガザやウクライナ、スーダン、コンゴ民主共和国などの紛争が影を落とし続ける一方、ミャンマーやアフガニスタンでの地震、気候変動に伴う記録的な台風や洪水が、多くの子どもの日常を奪いました。

こうした人道危機の中で、最も弱い立場に置かれるのはいつも子どもたちです。危機のさなかにある子どもたちと家族の命を守るために、ユニセフは世界各地で緊急・人道支援を続けました。この1年間の主な緊急事態とユニセフの支援活動を振り返ります。

ガザ地区中部で、ユニセフが届けた栄養支援物資を口にする子ども(パレスチナ、2025年8月7日撮影)

© UNICEF/UNI851516/El Baba
ガザ地区中部で、ユニセフが届けた栄養支援物資を口にする子ども(パレスチナ、2025年8月7日撮影)

 

新しい蚊帳を寝床に設置したバディアさんと子どもたち(スーダン、2025年5月30日撮影)

© UNICEF/UNI816423/Rajab
新しい蚊帳を寝床に設置したバディアさんと子どもたち(スーダン、2025年5月30日撮影)

2025年1月

コンゴ民主共和国東部の紛争激化

武力衝突によって、北キブ州のカニャルチニャからゴマへ、6人の子どもを連れて避難してきた母親のマシカさん。「この戦いが終わり、私たち家族が故郷の村へ戻れるように、助けてほしい」と言う(コンゴ民主共和国、2025年2月4日撮影)

© UNICEF/UNI731751/Benekire
武力衝突によって、6人の子どもを連れて避難してきた母親のマシカさん。「この戦いが終わり、私たち家族が故郷の村へ戻れるように、助けてほしい」と言う(コンゴ民主共和国、2025年2月4日撮影)

コンゴ民主共和国東部で、暴力が激化し、260万人の子どもを含む650万人以上の人々が、避難生活を余儀なくされました。

この混乱の中で多くの子どもが家族と離ればなれになり、武装集団による誘拐、徴兵、徴用、性暴力のリスクにさらされました。

ユニセフは、おとなの同伴者のいない子どもや家族と離ればなれになった子どもを保護して登録し、必要な医療や心理社会的ケアを受けられるようにしました。

東部の情勢激化-性暴力や徴兵など子どもの被害増加

 

2025年2月

ガザでポリオウイルス検出、集団予防接種実施

ガザ地区北部ジャバリアで、ポリオワクチン接種を受ける女の子(パレスチナ、2025年2月23日撮影)

© UNICEF/UNI751152/Nateel
ガザ地区北部ジャバリアで、ポリオワクチン接種を受ける女の子(パレスチナ、2025年2月23日撮影)

ガザ地区で長く待ち望まれた停戦が2025年1月19日にようやく発効して以来、ユニセフは水、せっけんや洗剤などの衛生用品、栄養や保健医療に関する物資、そして赤ちゃんや子どものための防寒着や防水シートを、地区内に輸送しました。

その翌月、ガザ地区の下水サンプルからポリオウイルスが検出され、ウイルスが環境中で継続的に循環していることが確認されました。子どもが感染リスクにさらされている状況を受け、ユニセフは他の国際機関とともに、ガザ地区でポリオの集団発生に対応するため、大規模な予防接種を実施しました。

2024年には2回の集団接種が実施され、95%以上が接種を受けましたが、戦争によってアクセスが困難な地域では約7,000人が未接種のままでした。今回の停戦により、保健スタッフのアクセスが改善されたことで、すべての子どもにワクチンを届けることを目指して、予防接種スタッフがガザ地区各地を巡回しました。

ガザ地区 停戦発効後 ユニセフ、多岐にわたる支援を拡大
ユニセフなど、予防接種実施へ ― 子ども59万人以上対象
■関連記事:ユニセフ・ドキュメンタリー映画 『Gaza's Silent Threat(ガザの静かな脅威)』

 

2025年3月

ミャンマーで、M7.7の壊滅的な地震

震源地のミャンマー中部マンダレー地域の倒壊した建物(ミャンマー、2025年3月28日撮影)

© UNICEF/UNI770507/anonymous
震源地のミャンマー中部マンダレー地域の倒壊した建物(ミャンマー、2025年3月28日撮影)

3月28日、ミャンマー中部をマグニチュード7.7の巨大地震が襲いました。

世界で最も複雑な人道危機の一つに数えられているミャンマーは、地震発生前から、650万人以上の子どもが支援を必要としていましたが、今回の地震でさらに人道状況が悪化しました。

ユニセフは子どもたちと家族の命をつなぐため、安全な水、衛生キット、そして家族を失った子どもたちへの心理社会的支援を届けるための緊急支援を地震発生直後から開始しました。

 

地震の震源近くのサガインで、水や衛生用品を配布するユニセフのスタッフ(ミャンマー、2025年3月31日)

© UNICEF/UNI772205/Htet
地震の震源近くのサガインで、水や衛生用品を配布するユニセフのスタッフ(ミャンマー、2025年3月31日撮影)

 

地震で避難した家族が暮らす仮設避難所で、本、鉛筆、クレヨン、定規が入った、ユニセフのスクールバッグを受け取った9歳の男の子。「バッグが一番のお気に入り」と話す。(ミャンマー、2025年5月27日撮影)

© UNICEF/UNI812185/Oo
地震で避難した家族が暮らす仮設避難所で、本、鉛筆、クレヨン、定規が入った、ユニセフのスクールバッグを受け取った9歳の男の子。「バッグが一番のお気に入り」と話す。(ミャンマー、2025年5月27日撮影)

 

2025年6月

イエメン南部で危機的な食料不安

重度の急性栄養不良と診断されていた生後9カ月のラヤン・アハメドちゃん。ユニセフが提供する治療用ミルクなど、必要な栄養治療を受け、快方に向かっている(イエメン、2025年7月22日撮影)

© UNICEF/UNI906865/Al-Basha
重度の急性栄養不良と診断されていた生後9カ月のラヤン・アハメドちゃん。ユニセフが提供する治療用ミルクなど、必要な栄養治療を受け、快方に向かっている(イエメン、2025年7月22日撮影)

イエメン南部では、6月から7月にかけて発生した洪水が農業に打撃を与え、食料不足を加速させました。

経済低迷と紛争に加え、洪水がインフラを破壊したことで、人口の半数以上が深刻な飢餓に直面。約240万人の5歳未満の子どもと150万人の妊娠中および授乳中の女性が急性栄養不良に苦しみ、病気、発達遅延、死亡のリスクが高まりました。

ユニセフなどの人道支援機関は、イエメンにおける人道支援活動の優先順位を再設定し、リスクの高い地域を対象に、食料安全保障、栄養、水と衛生(WASH)、保健、および保護の各分野における統合的な支援を実施。また、ユニセフは移動診療所を派遣し、洪水被害を受けた地域で重度の急性栄養不良に苦しむ子どもたちへの緊急治療を拡大しました。

経済低迷、紛争、異常気象などが影響 ユニセフら、さらなる状況悪化に警鐘

2025年8月

スーダン、紛争開始から500日

北ダルフールのタウィラにあるユニセフが支援する診療所で、栄養治療食を口にする子ども(スーダン、2025年5月4日撮影)

© UNICEF/UNI789976/Jamal
北ダルフールのタウィラにあるユニセフが支援する診療所で、栄養治療食を口にする子ども(スーダン、2025年5月4日撮影)

2023年4月15日にスーダンで暴力行為が激化してから500日が経過したスーダン。北ダルフール州などで人道支援のアクセスが極めて困難な状況が続いています。500日間にわたって包囲状態が続くエル・ファーシル市では、栄養不良、疾病、暴力によって日々幼い命が奪われており、ユニセフは、子どもに支援を届けるための妨げのない人道アクセスを強く求めています。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは「私たちはとてつもない悲劇を目の当たりにしています。エル・ファーシルの子どもが飢えに苦しんでいるにもかかわらず、命を守るユニセフの栄養支援が妨げられています。子どもは常に保護され、命を守るための支援を受けられるべきです」と訴えました。

治安状況が悪い中でも、ユニセフはパートナーと協力し、できる限りの支援を届けています。あらゆる手段を講じて栄養治療食や医薬品を運び込み、最も必要な場所に、保健・栄養支援、コレラなどの感染症蔓延を防ぐための水・衛生支援、そして必要不可欠な物資を届け、子どもが学んだり遊んだりできるような安全な空間も設置しています。しかし、支援ニーズの規模は現在もなお甚大です。

スーダン エル・ファーシル 500日の包囲、16カ月以上支援遮断 「子どもが飢えに苦しんでいる」
スーダン:絵で感情を表現し、心の傷を癒す ユニセフによる子どもの「安全な居場所」

 

2025年10月

アフガニスタン東部地震

マグニチュード6.0の強い地震により倒壊した、クナール県の自宅前に立つ6歳のアジザさん(アフガニスタン、2025年9月2日撮影)

© UNICEF/UNI859079/Meerzad
マグニチュード6.0の強い地震により倒壊した、クナール県の自宅前に立つ6歳のアジザさん(アフガニスタン、2025年9月2日撮影)

8月31日、アフガニスタン東部でマグニチュード6.3の大きな地震が発生し、その後も余震が続きました。被災地では水道やトイレなどのインフラが壊れ、安全な水を確保できない状況に陥り、多くの子どもたちが下痢や感染症の危険にさらされています。

ユニセフはすぐに緊急支援を開始し、給水車で安全な水を届けるほか、壊れた水道やトイレの修復を急ピッチで進めました。さらに、石けんや衛生キットを配り、病気を防ぐための衛生習慣を広める活動も行っています。こうした取り組みにより、子どもたちと家族が健康を守りながら生活を立て直せるよう支援を続けています。

クナール県の保健センターを訪問中の、ユニセフの緊急支援担当官(アフガニスタン、2025年9月2日撮影)

© UNICEF/UNI859114/Meerzad
クナール県の保健センターを訪問中の、ユニセフの緊急支援担当官(アフガニスタン、2025年9月2日撮影)

 

クナール県で、ユニセフのスタッフから支援物資の衛生用品を受け取る、地震で被災した家族(アフガニスタン、2025年9月7日撮影)

© UNICEF/UNI860050/Azizi
クナール県で、ユニセフのスタッフから支援物資の衛生用品を受け取る、地震で被災した家族(アフガニスタン、2025年9月7日撮影)

 

アフガニスタン地震:犠牲者・被災者の半数以上は子ども

■関連記事:アフガニスタン現地報告会(小川 亮子 プログラム専門官)

2025年11月

フィリピン、超大型台風が上陸

ミンダナオ島南部で、超大型台風26号がもたらした大雨により、浸水した家屋から避難する親子(フィリピン、2025年11月8日撮影)

© UNICEF/UNI895890/Mascarinas AFP
ミンダナオ島南部で、超大型台風26号がもたらした大雨により、浸水した家屋から避難する親子(フィリピン、2025年11月8日撮影)

8月31日、フィリピンに超大型台風26号(フォンウォン)が上陸し、全国16地域に甚大な被害をもたらしました。推定170万人以上の子どもが被災し、多くの家庭や学校、保健施設が損壊。子どもたちは感染症や心理的ストレス、栄養不良など深刻なリスクに直面しました。

ユニセフは直後から緊急支援を開始し、備蓄していた物資を迅速に配布。損傷した教室の修繕や学用品の提供も進めました。また、安全な水の供給や衛生キットの配布を通じて感染症予防に取り組み、子どもの保護と心理的ケアも展開しています。

フィリピン台風 170万人超の子どもに影響

子どもたちのための緊急・人道支援

ユニセフは、緊急・人道支援に関する報告と2026年の支援計画を今月発表しました。
2025年前半の緊急支援の一例として、570万人の子どもにはしかの予防接種を実施し、690万人の子どもに教育支援を提供、さらに2,110万人に安全な水を届けました。

2026年には、133の国と地域で7,300万人の子どもに命を守る緊急支援を届けることを目指します。一方で、世界的な人道援助資金の削減で、支援活動への制約が増すなか、激化する紛争、拡大する飢餓などの影響により、2026年は2億人以上の子どもが人道支援を必要とする見込みです。

「子どもたちのための人道支援2026」はこちら

すべての子どもの命を守り、健やかな成長を支えるために、2026年もユニセフは活動を続けてまいります。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

毎月(定額)のご寄付 今回(一回)のご寄付

※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

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